Glare4

□徒花の女
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「…ちょっと派手にやり過ぎた、かな。」



深い森の中、重たい体を引き摺りながら烙舞は自嘲的な笑みを零した。
赤く滲んだ脇腹からはジクジクとした痛みが込み上げる。
烙舞はしばらくの間俯いて浅い呼吸を繰り返していたがやがて何かの気配を察して顔を上げた。
微かに聞こえる息遣い、しかし人間のそれとは違う冷たい土のような香りに烙舞は目を細める。
人間じゃ、ない?



「誰?」

「…。」

「…俺気が短いんだよね、出て来ないなら問答無用でこっちから行くよ?」



烙舞が殺気を込めながら言葉を紡いだ途端、ガサリと音を立てて茂みの中からは一人の女が現れた。
女が現れた途端に土の香りは濃くなったがそれと共にふわりと漂ったのは甘い花の香り。
女は銀と言うよりも白に近い色の髪を揺らしながら一礼した。



「ワタシはこの森に住むアンデッド=キメラのドロテア。血の匂いがしたから気になって…」

「…ふぅん。」



なるほど、アンデッド=キメラだと言うならばこの女の容姿に納得がいく。
女、ドロテアは特異な姿をしていた。
美しい女の顔立ちをしているが頭部からカラスのそれに似た翼が生え、右腕と下半身は獣のよう。
極めつけに左腕を筆頭に体の所々が骨化している。
ドロテアを上から下までまじまじと見ると烙舞はゆっくりとまばたきをした。



「…で、ドロテアだっけ?血の匂いがしたから気になったってことは俺を食おうとでも?」

「く、食う?違うわ、ワタシは…」

「じゃあ何さ。人間どもに俺を引き渡す?悪いけど俺、怪我してても捕まる気はないよ。」

「違う!あなたの手当てをしに来たの!」

「……は?」



烙舞は人生初の間抜けな声を出した。


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