Glare4

□嘘つきは斬首刑に処す
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「無様だな、フレンジィ。」



最強で最凶と謳われた悪魔は誰だったか。
狂気を抱え込みらんらんと輝いていたあの瞳の面影はどこにもない。
そんなフレンジィの姿を見て闇神子、キメラは鼻で笑った。
脇に控えているルチカの肩がぴくんと小さく動いたが気にはならなかった。
キメラは拘束され、自由に動くこともままならないフレンジィを上から下までじっくりと見るとふわりと宙に浮き、長身のフレンジィと目線を合わせる。



「貴様は今どんな気持ちなんだ?愛を知り、そして失い、欠けたものを補うように大量殺戮を行った今の気持ちは?」

「…。」

「答えろ。私に逆らうのか?」



自らの問いに答えず、目線を逸らしたフレンジィが気に食わなかったのかキメラは僅かに目を細めるとフレンジィの髪を乱暴に掴み、無理矢理に視線を合わさせた。
フレンジィが痛みと屈辱で顔を歪ませながらも睨み付けてくるがキメラは尚その行動を止めることはなかった。
フレンジィは悔しげな表情でキメラを睨み付けてからぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始める。



「……。…別に普通だよ、何も感じない。」

「…ほう?」



嫌みたらしくゆっくりとした語調でキメラは相づちを打つ。
フレンジィの瞳は相変わらずキメラを睨み付けているがその瞳の奥に宿る何かをキメラは知っているのだ。
だからこそキメラはフレンジィを嘲笑い、愚者だと心中で罵った。



「もう一度問う、本当に何も感じないのか?」

「…キメラ様もしつこいね、何も感じないって言ってるじゃない。」

「そうか、もう良い。」



さらばだ。
そうキメラが言葉を紡いでからは一瞬だった。
フレンジィの髪を掴むキメラの手が離れたかと思うと次の瞬間にはフレンジィの首が宙を舞っていた。
赤が、紅が、辺りを染めあげる。
首を失った体はゆっくりと前に倒れ、赤の海へと沈む。
視界の端でルチカが息を呑むのが見えた。
キメラは頬に飛び散った血を手の甲で拭うと感情の籠もらない瞳で物言わない者と化したフレンジィを見下ろして言葉を紡いだ。



「貴様は嘘つきだな、フレンジィ。」




嘘つきは斬首刑に処す
(愛の先には喪失しかないのだ、貴様も感じただろう?)

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