Glare4
□時追い
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『兄様、兄様、律は御国の為に何が出来ますでしょうか?』
『律、そう思ってくれるのはありがたいが今は風邪を治しておくれ。』
『風邪をひいている時だからこそ問うのでございます。風邪をひいてしまうような律めでも御国の為に出来ることがございましょうか?』
『…。…人は皆脆く弱い、誰かと関わっていなければ生きていられない。』
『皆弱い…?兄様はお強い男児にございます。』
『いいや、弱いよ。お前の前では強い男児でいたいだけだ。…さて、続きを話そうか。誰かとの関わりは初めは細い糸のようなものでもやがて鎖にも勝る強固な絆となる。しかし難しいことにその絆と言うものは互いに信頼し合わねば生まれないのだよ。』
『…。』
『相手の存在を大切に思い、自分を構成するセカイの一部と考える。各々の心の中に広がるセカイが集まって私達が生きる世界が出来る。律、お前のようなこれからを生きる者達に必要な物は信じる心だ。』
『信じる、心?…確かに、兄様のおっしゃることは正論かもしれません。しかし、形無きモノでどうやって御国を守れましょう?』
『律はまだ幼いから分からないかもしれないがいずれ理解出来るよ。どんなに肉体を鍛え
ていても、どんなに頭脳明晰でも、心が脆くては意味が無いんだ。律、強い心を持ちなさい。前に進む力を蓄えなさい。それがお前に出来ることだよ。』
『兄様、そうしたら律は兄様のようになれますか?兄様のような立派な軍人さんになれますか?』
『……ああ、きっとね。』
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