短編

□夢見草と散る
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「あ、あれ・・・・・・」



必死に手探りで探しても、触れるのは冷たい床だけ。
また馬鹿をやってしまったんだろうなって、一人呟くんだ





(お、音はこっちでしたはずなのに・・・・)



壁を伝って広い範囲を探そうと試みる。

一冊は見つかったのだが肝心の、自分の主な攻撃用でもある雷の魔道書が見つからない。


何もないところで扱けるのは、よくあること。


否、何かあるかなんて、確認出来ないけど。
それでも光を求める自分の姿なんて、鏡で見たくなんかない




「え、えと・・・・・・・・・・あれ・・・・・あっちかな・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」



聴覚が他人より数倍すぐれているハズなのに、人の気配にも、足音にも気づかないほど探していたのだろうか。
それとも、仕様なのかは分からない。

とにかく、他人の邪魔にはならないようにって思ってるんだ



「・・・・・・・・あの」


「ご、ごめんなさい!!すぐに退きますので!」



ほら、また。

こんな場所で四苦八苦なんてしてるからだ


そしてしまいには舌打ちでもされるのがオチ。



必死に手を動かしていると上から暖かい何かが置かれる。
驚いてもう片方の手を乗せるとゆっくりと持ち上げられる。



「貴方の探しているものは、ここですよ」


「・・・・・・・ぁ」


「雷の魔道書ですよね」


「あ、有り難うございます」



体温を感じない、普段触っている本をゆっくりと胸に収める。
手を離されまいとぎゅっと力をいれ、いるはずの方向に顔を向ける。



「有り難う、ございます」


「・・・・・・・・・」



壁についている手に力を入れ、もう一冊の本を持ち腰を上げる。

服についているホコリを掃っていると、再び声がする。



「貴女、目が見えないのですか?」


「はい、幼い頃に不慮の事故に会ってしまって」


「それで戦場で戦えるのですか?」


「大丈夫、これで今を生きているのですから」



慣れたものですよ

一言笑って見せると再び気配が消える。
元から彼の気配なんて合ったようでなかったようなもの。

人なのかな?って思えるほど。



「・・・・・・・・セネリオです」


「セネリオさん、ですね」


「・・・・・・戦場や、何かあったときは呼んでください」




そう呟くように言うと小さな足音が遠ざかっていった。

セネリオ・・・・・確か、傭兵団にいた参謀さん。
顔見知りが激しく、口を開いたら自分が一たまりもない、と

あまり良い噂は聞かない


だけど、そんな人が来るなんて

























        夢見草と散る
      
  (呼んでみようかな)
       (用はないけど、話してみたい)

















†*†*†*†*†

絶対、小言とか一撃必殺な単語を言いそうな気が




お題提供*ララドール

*20080306*

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