テニスのキオク

□遠く、遠く
1ページ/3ページ

今日は、一年に一度の、願いが叶う日。





沖縄、比嘉中学校のテニス部にその男はいた。


「――――ぅ」

「はぁ……」

「――郎」

「ん゙〜……」

「裕次郎」

「はぁぁぁぁ」

「裕次郎っ!」

「ぅわぁっ!」


耳元でいきなり怒鳴られ、その男――甲斐裕次郎は、驚いて飛び上がった。


「凛〜…いきなりぬーだばぁ?」

「いきなりじゃないぜ。もう何度も呼んださー」

「ぇ、じゅんに!?」

「……ふりむー。ボーッとするなよ、副部長」

「ぅぅぅ…」


平古場に言われ、シュンと縮こまる甲斐。

飼い主に怒られた犬に見えるのは気のせいじゃないと思う。


「…で、ぬーだばぁ?」

「永四郎が呼んでるさー」


そう言った瞬間に縮地法フル活用で走っていく甲斐。


「……まー、急いでももうゴーヤー確実だけどな」


哀れ裕次郎、と平古場は呟いた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ