目的地はどこですか?
□貴方は誰ですか
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≪まもなくカナワタウン行きが発車致します、繰り返します……≫
いつも通りのアナウンス
「今日はどこに挑戦するんだ?」
「今日はシングルだな、BP欲しいし」
「じゃあ、俺はダブル行って来るかなぁ」
「だったら、どっちが多く勝てるか勝負だ!」
「望むところ!!」
いつも通りの客の声
「またあの客来てるよ」
「あの人毎日来てるよね?」
「何か、全然勝てないからってここに通ってるんだって」
「へぇ、まっ精々がんばれってか」
「そうだな」
いつも通りの駅員の会話
いつも通りの風景の片隅には、使い古されたつなぎを着てホームを清掃する一人の男性
彼の軍手をしている手には普通の箒が握られている
近くにもゴミ袋やちり取りが置かれている
彼はここの清掃員だ
それ以上でもそれ以下でもない
ただ彼には奇妙な噂がある
《清掃員の男性が、サブウェイマスターの代理も勤めている》
それは、ただの一般トレーナーの証言から始まった
そのトレーナーが言うには
『マルチに挑んだとき、ノボリさんの隣の人がクダリさんじゃなかった』
始めは誰も信じなかった
サブウェイマスターはあの二人しかいないのだから
しかし、時が経つにつれて目撃者も増えた
清掃員はここではたくさんの人が働いている
それ故、清掃員の誰が隣にいたのかは誰も知らない
好奇心旺盛なトレーナーはその清掃員を探そうとするが、結局はどの人に聞いてもはぐらかされて終わってしまう
いつの事だっただろうかトレーナーがある清掃員に聞いた
『貴方は誰ですか』
彼は暫し黙っていたが、次には口元に笑みを浮かべて応えた
『ただのしがない清掃員ですよ』
次の瞬間その清掃員は消えたそうな……。
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