色々な文かもしれない
□Garnet
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今気付いた。
間違いなく、傷物に、なる。
「おいおい、勘弁しろよ!!」
ヌリョークの静かな街並に入った頃、とうとう俺は叫んだ。その声に野良猫が逃げたのが、物音で解った。
「ふぁあ…うん?ジャック…」
頭を起こす時、シメの一発をガツンと鳴るぐらい盛大に枠フチへかましながら呑気に目を覚ましたメサイアは、信じられない一言を俺に寄越した。
「今日の依頼は何でしたっけ?」
……冗談じゃねぇ、もう一件なんて。
たった今帰ったばかりだろ(俺は何もしてないけどな!)頭イってんのかコイツ!
「うるせぇ、行くなら一人で行って来いこんのド阿呆!!」
そして俺は、さっきの音と同じくらいデカい音をたててゲンコツをお見舞いしてやった。
『今日は泊まって行ったらどうです』
頭にタンコブの一つも作らなかったメサイアは(俺はグローブ越しに手を腫らした)、街をガレージのある小屋へと歩きながらそんな突拍子も無い提案をした。
しらっとした顔で頭の被り物を脱ぎ、長い金髪をかき上げる。
「はぁ…またなんでそうなる」
「ジャック、貴方が居ないと猛烈に心細いのです」「餓鬼かお前は」
まさか山羊野郎のお化けが出たとか覚えの無い肉親の類が訪ねて来るとかそんな事に怯えてるのか?
「俺はやる事がたんまりあんだよ、お前の子守なんざ「我が友よ」
急に話を遮ったコイツは、またいつもの調子で、しかも勿体振った口調で(ここが一番腹立つ)まくし立て始めた。
「ちょっと良いですか、子守というのは本来子供に対して、または頼りない同胞に対する嫌味の意味で使われるものであって今の私の提案に対する受け答えに付随する理由として相応しくありません。そもそも私は年齢上でこそ幼子であれ、外見、分別は成人男性に匹敵するものであると私自身自覚して生活しています。そして次に頼りなくもありませんしというか寧ろ貴方より遥かに上回る戦闘能力を保持しているつもりですがそれに私の精神的苦痛は貴方に理解して頂ける範疇をとうに越えているのですそう、例えば」
「わ、解った!解ったから黙れ!」
こうなったコイツは梃子でも動かない意思を持っている。俺が折れるか、このままうんたらかんたら朝まで語り明かされるか…どうあっても泊まる事になる。
仕方なく俺は泊まっていく事になった。