小説2

□頑張りすぎる君へ
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「ほらよ」
その声と共にデスクにマグカップが置かれた。
ティエリアはキーボードを打つ手を止めてマグカップに口をつける。

「ありがとう。ラッセ」
微笑むとラッセはその髪を撫でた。

「いや。それよりあまり根を詰めるなよ」

「ああ、分かっている。もう一区切りついたところだ」

多くの仲間をあの戦いで喪った。
残されたメンバーでソレスタルビーイングの再建を目指している。
その中でもティエリアはリーダーとして頑張っている。
性格も柔らかくなり、以前なら髪を撫でようものならその手を叩き落としていた。
ティエリアを良い方向に変えてくれ、それを一番喜んでくれる彼はもういないのだけれど。
ラッセは悲しげに瞳を揺らした。

「ラッセ、どうした?」
ティエリアに名を呼ばれてラッセは現実に引き戻された。
そこには不安げに見つめてくるティエリア。

「なんでもないから心配するな」

「本当か?君はたまに無理をするからな」

「その台詞、そっくりそのままお前に返すよ」

「別に無理などしていない」

「なら今日は何時間そこに座ってたんだ?」
ラッセの言葉にティエリアは押し黙った。
ラッセはその姿を見て、危惧していたことが当たったのだと確信した。
ラッセは一つ溜め息をついた。

「飯も食べてないんじゃないか?」

「別に故意ではない…」
思い返してみると食事をした覚えはない。
だが業とではないのだ。
だから悪くない。
ティエリアはラッセから視線を反らした。

「ちょっと待ってろ」
少しの間を置いた後、ラッセはそう言って出ていった。
先程のラッセの様子から怒られるものとばかり思っていたティエリアはなんだか表紙抜けをしてしまった。

ティエリアはマグカップに口をつけた。
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