小説1

□大人のハロウィン
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空に月や星が輝く中、俺達は散歩をしている。
休暇を貰えた俺は同じく休暇を貰ったティエリアを半ば無理矢理地上に降ろし、故郷であるアイルランドで過ごすことにした。
人混みが嫌いなティエリアのことを考え、都会ではなく片田舎の農村地区を選んだ。
王留美が近くにコテージを所有しているというので貸してもらった。感謝、感謝。

降りた直後は文句を言っていたティエリアもデータでしか見たことがない自然に興味深々。珍しいことに積極的に農家のオヤジさんに栽培方法を聞いていた。
今時、畑仕事に興味を持つ若者がいるなんて…と感激したオヤジさんから大量の野菜を貰った。
畑を見る度にその調子で夕食は色とりどりの野菜のオンパレード。
栄養のある料理だったからティエリアの機嫌が良い。
野菜をくれた農家の人達にも感謝。


横を歩くティエリアの顔は綻んでいて足取りは軽い。
そんなティエリアを見て俺の顔の筋肉は緩む。
今なら肩を組んでも抵抗されないだろうとそっと腕を伸ばす。

あともう少しというところで俺達の背後から聞こえてきた複数の足音と話声に邪魔をされた。
ティエリアが足音に気付き振り向く。俺は思わず伸ばしていた腕を引っ込める。
悪いことをしたわけじゃないから堂々としていればいいものを…!
スナイパーとしてはそれなりのクセに日常ではただのヘタレかよ、この腕は。
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