小説1

□恋するきっかけなんて案外単純なもの
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廊下を行くティエリアを見掛け、僕は声を掛けようとした。

けれど僕はティエリアの名を呼ぶ事が出来なかった。
口を開いた瞬間、驚きの光景が目に飛込んできたから。

ティエリアが転んだ。
僕の目の前で。

曲がり角からハロの大群が転がりながら突如現れて避けようとしたティエリアがバランスを崩して転んでしまったのだった。
追い掛けっこをしているらしい大勢のハロはそれに気付かず、「キャーキャー」言いながら僕の足下を通り過ぎていった。


数秒フリーズしていた僕は脳内に響くハレルヤの笑い声に現実に戻されて座り込み、膝を摩るティエリアに駆け寄る。

「ティエリア!大丈夫!?」

ティエリアの身体は大きく跳ねた。振り返り、僕を見たティエリアの瞳はこぼれ落ちてしまうのではないかと思う程に大きく見開かれている。
「アレルヤ・ハプティズム!」

「立てる?」
屈んで、手を差し出したけれどティエリアは手を重ねてこない。

「貴様、見たのか?」
目を吊り上げ睨んでくるティエリア。

「う…うん」

転んだ姿を見られて良い気分になる人なんていない。
プライドの高いティエリアなら尚更不快な気分なんだと思う。
何も考えずに駆け寄ってしまった自分に反省した。
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