小説1

□大人のハロウィン
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軽い自己嫌悪に陥りながら俺は犯人を見た。

それは子供でそれぞれが様々な仮装をしていた。
ドラキュラや妖精、カボチャに狼男。
随分凝ってるなと思えばシーツに目、鼻、口の部分に穴を空けてスッポリ頭から被っているだけの子もいる。
皆満面の笑みで手に持つカゴには菓子が沢山入っている。
成程、縁遠くなって忘れていたが今日はハロウィンだ。

納得する俺の横でティエリアは目を丸くして子供達を見つめていた。
子供達は立ち止まっている俺達を抜かし、元々小さな背中が更に小さく見える程、遠くに行ってしまった。


ティエリアは博識だけどこういうイベント事は知らないんだろう。

俺はハロウィンの説明をすることにした。

「今日はハロウィンなんだ。夜、子供が仮装をして近所の家を周る」

「その名前は聞いた事があります」

「で、『Trick or treat』…つまり『お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ』って言ってその家の人から菓子を貰うんだ」

ティエリアは目を見開いた。
「それは脅しじゃないか!大人達も何故それに従う。……まさかあの子供達は武器を所有しているというのか?」

真面目な顔で言うティエリアに俺は笑いを必死で堪えた。ここで笑いでもしたらお姫様の機嫌は悪くなっちまうからな。
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