諒の小さな業績3
□際物語
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そこは、果てが無いと思える、永久回廊だった。憎悪と汚濁だらけの、大きな密室だった。
下を見れば至る所に肉片と血があり、辺りを見渡せば破壊され尽くした建物にも血がついている。
空だけが青くて──だけれどここは赤かった。正しく正反対。
その大体中心の位置に、一人の男が立っていた。
中々背も高く、それに見合うように肉付きも良い。中でも特徴的なのが髪の毛で、全体的に逆立っていた。
男は、ただ茫然と立ち尽くしていた。目的も、自らの意志もなく。目の焦点も定まっておらず、顔の表情には生気が無い。
「…………生きてる」
ここに来てようやく、男は口を開く。
「生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる」
それは言うなれば感謝の叫びだった。
絶望の淵にいた自分が生きていられた、そんな境遇に対する。
それを思えば泪が込み上げてきそうで。
男はその場に座り込み、顔をくしゃくしゃにして泣き叫んだ。
──この町で生きているのは彼一人。喜びに賛同する者も、歓喜の声を反響させる物も、今では何一つ残ってはいない。