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□蜜の味
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丸い曲線を描いた可愛らしい尻が目の前で揺れている。
たまに見上げてくるその瞳には恐らく息苦しさの為だろう、生理的な涙が浮かんでいて。
小さな口を出たり入ったりする己のペニスは酷くイヤらしい別のイキモノのようだ。
垂れ下がった二つの袋を片手で揉むその仕草だって、自分がこの子にいつもしてやっている行為で。
横から幹に吸い付きながら親指の腹で先端を撫でるのだっていつも自分がこの子にしてあげている愛撫で。
この幼い恋人は本当に自分しか知らないのだ。
その喜びと最愛の恋人が己を愛してくれている物理的な快感で頭も身体もオカシクなりそうだ。
決して高度な愛撫とは言い難い。
それどころか口を大きく開けているのが疲れるのだろう、たまに歯が先端のせり出している部分に当たって痛い程だ。
それでも。
誰と比べようも無いが、今まで経験したどんな相手との行為よりも気持ちがいい。
愛するというのはそういう事だ。
閨での我慢強さには自信があったが、あっという間に陥落させられそうになる。
不意に先端を強く吸われた。
「ん、アッ、は…ッ」
自分でも情けなくなるような声が漏れるが、それも隠そうとは思わない。
この悦びを、全身で幼い恋人に伝えたい。
口の中でネバつく体液の種類がどうも変わってきたようだ。
今までとは違う、経験した事のない味がする。
とてもじゃないが美味しいなどどは思えない。
でもこれが多分、彼の絶頂が近いシルシなのだろう。
そう思うと自然に喜びが沸いてきて、吸い上げる口の動きと幹を擦る手の動きを早める。
内腿が突っ張り腰が戦慄く。
果ててしまう前兆を感じ、この丸い小さい頭を掴んでその喉の奥までメチャクチャに突いてしまいたい衝動をなんとか押しやる。
大きく息をついて可愛い恋人の機嫌を損ねないように気遣いながら。
「きょうや、…ッ、もういい、出る、から口離せ…」
優しくその頭を押すと。
「ヤだ。このままイッて」
潤んだ瞳で見上げ先端部分を口に含んだまま我侭を言う恋人。
本当は不味い。
物凄く不味い。
口の中に広がるディーノの体液は濃度を増してきて。
彼はいつもなんて事ないように自分の熱を飲み込むのに。
自分にだって出来るハズなのだ。
ただもう夢中で彼のペニスを吸い上げた。
「うあ、もう、ダメだ、イく…ッ!は…ッ、く…ッ」
抑えきれない、という程の掠れた声が上から聞こえたと思ったら。
一瞬、口の中にある彼のペニスが更に膨張したように感じ。
喉の奥近くまで咥え込んでいた彼の先端から強体液が勢いよく飛び出してきた。
キツイ匂いが鼻をつき、喉の奥放たれた体液を嫌が応にも少し飲み込むと。
肺の辺りから物凄い勢いで逆流してくる吐き気に逆らえない。
「けほっ、けほっ!はぁ、は…ッ」
飲み切れなかった彼の体液が口から漏れ、ポタポタとシーツに落ちる。
慌てて口を覆ったけど、咳が治まらず絶頂を迎えたディーノより荒い息を繰り返す雲雀。
「大丈夫か?ほら見ろ、言わんこっちゃねーだろ」
ディーノの大きな掌で背中をさすってもらうとようやく落ち着いた。
懸命に自分の熱を飲み込もうとしてくれた幼い恋人が誰よりも愛おしい。
抱いて抱き締めてバカみたいにキスして愛してると言い捲くりたい。
その衝動のまま抱き締めようとしたら。
「ごめん…なさい。溢した」
先程まで己を咥えていたその唇から出てきた言葉に耳を疑った。
こんな風に、雲雀がディーノに謝った事は初めてではないだろうか。
勿論、不意に身体がぶつかったり言葉で誤解があったり。
己に非がある場合には雲雀だって謝れない程愚かではない。
それでもいつも「ごめん」とか「悪かったね」とか、そんな言葉しか聞いた事がなかったから。
こんな場面で。
してくれた事が嬉しくて、もう褒めて褒めちぎって頭を撫で回してやりたいくらいなのに。
「ごめんなさい」だなんて、もう本当にこの子供は。
愛しくて可愛くてとても大切で、そういう思いが綯い交ぜになって言葉すら出てこない。
「何…謝ってんだよ。オレ、もう狂いそうなくらい嬉しいのに」
やっと喉の奥から声を絞り出すと、幼く小さな身体を抱き締めた。
すると濡れた唇も拭かずしがみ付いてくるから。
こんなに大切なものは世界中のどこを探したってない。
「…気持ち、良かったの?」
不安そうに尋ねてくる、その思いの中から不穏なものは全部取り去ってやりたくなる。
「だって、溢した、あなたの。…あなたはいつもちゃんと飲んでくれるじゃない」
「気持ち良かったに決まってる。メチャクチャ良すぎて頭が変になりそうだったぜ。だからイッたんだ。気持ちヨクなけりゃあんな早くイきゃしねぇよ」
明るい日差しの中、そこだけに夜が訪れたような漆黒の髪を優しく撫でながら。
親指の腹で濡れた唇を拭ってやる。
「もう、ホント、マジで最高。またシてな?」
イタズラっぽく微笑むと柔らかい唇にキスをした。
ほんのり苦いのは恋人が自分を愛してくれた証。
後はもう、この愛しさに任せてメチャクチャに交じり合いたい。
「はぁ、は、ふ…ッ、っ、あ゛…ッ、く、イイ…ッ」
しっかり抱き込まれ、繋がっている所から蕩けそうな程の快感が血流に乗って全身に広がる。
先程まで自分がしゃぶっていた彼のペニスが今は身体のナカにある。
そう考えただけでも身が焼き切れそうな程快楽に支配された。
それなのに。
「なぁ…お前がさっきまで舐めてたのが、ナカに入ってるんだぜ。何か凄いヤらしいな」
愛撫も言葉も巧みな年上の恋人がそんな台詞を耳元で囁くから。
「ん…、く、は…ッ」
ドロドロに溶けたチョコレートのような声を垂れ流し、身体を震わせ耐えるしかない。
もはや意味のある言葉など話せる状態ではなかった。
グジュグジュと淫猥な音を立て、彼の雄が胎内で魔黷トいる。
自分さえ知らない身体の奥底まで知り尽くされているのだ。
「は…ッ、お前の口もいいけど、ナカもすっげイイ…ッ。恭弥は?気持ちー…?」
それこそネトネトになった蜜のような声で尋ねなくても。
彼だって知っているだろうに。
「はぁ、は…ッ、イイ、ふ…ッ、気持ちイイ…ッ、あ゛ッ、も、イく…ッ」
「いいぜ、イけよ。お前が欲しいだけ幾らでもシてやるからな」
身体の中心から昇ってくる衝動に逆らわず、彼のペニスを愛撫している時からずっと溜め込んでいた欲をようやく吐き出した。
行為の後は、いつも彼の広い胸に抱き締められている事が多いのだが。
何故だか今日はこの年上の男が甘えてくるものだから。
自分の薄い胸に彼の頭を抱きこむと、フワフワの金の髪が素肌にあたって少しくすぐったい。
「恭弥」
「うん」
「恭弥」
「何?」
「きょうやー」
「だから、何?」
グリグリと鼻先を胸に押し付け、バカみたいに自分の名前を呼ぶディーノ。
「別に、ただ呼びたいだけ」
「何それ。オカシな人だね」
それでも彼の甘い声で名前を呼ばれるのは心地いいからしたいようにさせておく。
子供みたいな大人のあなた。
自分がオトナの行為をしてやる事で、彼が戸惑いなく子供の部分を晒せるようになったのだとしたら。
気が向いたらまたしてやってもいいとは思う。
恋人の味は蜜の味、とまではまだいかなくても。
→遺書