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□或る猟奇的な叙情詩
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僕は雲の守護者

君は嵐の守護者

君みたいな
嵐みたいな暴力的な愛。
僕はそんな風でしか、君に想いを伝えられない。



 或る 猟奇 的な  叙情    詩



我慢なんてできない。
無理矢理僕のナイフ突き刺した。
彼はやっぱりマシュマロみたいだった。
やわらかく肉が裂け、
果汁みたいな血が零れる。
顔は歪んでいるけれど
けれども何処か艶やかな声が聞こえた。



はやと、はやと、はやと、



僕の唇は狂ったスピーカーみたいに
彼の名前だけを繰り返しながら彼のそれに何度も触れる。
きれいに、残さず食べてあげる。
君がお気に入りなソファにでも、
ベッドの中でもいいよ。
君が望むならば毎晩抱き締めて眠ってあげるし、
寂しいというのなら愛を囁いてあげよう。
だから、大丈夫。


君の血が染み込んだシーツで眠って
君を刺したナイフを君が舐めあげる。
何て素敵なんだろうね。


「・・・っ、は・・・ひば・・・り」



意識が朦朧としてきたらしく、緑の瞳は焦点をなくして
空ろな目をしている。
それでも未だ、僕の腕をしっかりと握って縋るようにしてくる君が
愛しくて堪らなかった。
そっと、馬鹿みたいに優しくキスをすると
塩っぽい、涙の味がした。
酸素がほしくて苦しいと呟くのを無視して、
暖めてあげるみたいに君のその唇を細いナイフで塞ぎ続ける。
その間も僕のナイフは出たり入ったりを繰り返して、
舌を絡めている音なのか肉体が悲鳴を上げている音なのか分からなくなってきた。


すきだよ。


そう囁けば、こんなにも酷いことをされているのに
君は
俺もだ
と返してくれる。
滴るどころか
流れ落ちている真紅の果汁。
もう、しがみつけなくなっている君を支え抱く。
瞳はもう閉じてしまいそうだったから、目蓋へと唇を落とした。



すきだよ。

真っ白に濁った果汁を
君の体内に注ぎ込んで

君も白濁の果汁で
僕の黒い制服を汚す


ナイフを抜けば、君は声を上げる。
隼人。
呼びかけてみても、何も答えてはくれない。
僕の与えた快楽に溺れ、眠ってしまったのだろうか。
紅いジュースが乾くまで、囁き続けてあげようか?
あいしてるよ。
あいしてるよ。
あいしてるよ、隼人。
眠りに堕ちた彼には伝わらない。
分かっているけれど、何度もそう呟く。



僕の愛は、君に伝わったかな。
歪んだ僕の愛は、君に。
涙と赤い液でぐちゃぐちゃになったきみは
世界中の誰よりも、綺麗で、可愛い。



夜明けのキスは、血の味がした。


シーツには君の滴りが咲き誇る


アイシテルヨハヤト



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