Dグレ

□満月の夜に
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「…暇だ」



今日は休日。
場所は自室。


久しぶりで自分にとって珍しい休日。本来、自分の隣にはいつもヘラヘラしている赤毛の青年が居るはずだった。
だがその青年は任務で今はロシアに居る。





一昨日ラビが部屋に訪ねて来て、明日の予定を聞かれたので任務があると答えた。



「えーっとι…じゃ明後日は!?」



なにをコイツは焦ってんだ…


「明後日なら…別に何もねぇよ」

そう答えた時のラビの顔は今でも覚えている。いつも眠そうなタレ目が大きく見開かれ、パッと花が咲いたような笑顔だったから…。


「じゃ、明後日は二人でゆっくり出来るさね!」
「…そうだな」


お前が笑うから俺まで笑ってしまった。


だからちょっとだけ…いや、本当は凄く期待していたんだと思う。
久しぶりで俺達には珍しい休日だから。
二人でゆっくり出来る休日だから。


俺はきっと…心の中で楽しみにしていたんだ。




そんな中のラビへの任務。
正直ショックを受けてしまった。だけど一番ショックを受けたのはラビなんだ。あんなに眩しいぐらいの笑顔が、昨日は悲しそうな笑顔に変わっていたから。

だからラビは昨日俺に甘えたんだ。






「今日は満月か…」

ヒビが入っている窓を通して今宵の月を見つめる。
雲一つない夜空を飾る満月は美しかった。




お前は今何やってんだ?


アクマと闘っているのか?
それとも寒さに対して文句でも言っているのか?
それとももう寝たのか?

…別にお前が無事に帰って来てくれるならなんでもいい。




今なお輝き続けている満月。邪魔のない夜空に輝き続けている満月なら、届けてくれるかもしれない。


この破裂しそうな゙愛しい゙気持ちを…。



指で窓に触れ、月を撫でる。


きっとあいつもこの月を見ているだろう。だったら月を媒体に、この゙愛しい゙気持ちを君に送ろう。





最後に満月の輪郭を縁取るように優しく撫でた。


「…寝るか」

一呼吸おいて窓から離れ、ベッドの中に入る。


―…ギィ




このベッドってそんな古かったっけ…


そんなことが頭を掠めたが一瞬でどうでも良くなった。



あいつが帰って来たらあいつの『ただいま』より先に『おかえり』と言おう。


そしたらあいつはきっと、俺が大好きな笑顔で「ただいまッ!」と言て抱き付いてくるだろう。



そしてきっと、俺もあいつの笑った顔を見て笑うんだ。




END
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