Dグレ
□君の温もりを
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「…っという訳だから、明日からお願いネ」
「ロシアねぇ…了解さ〜」
そう言いながら司令室から出てきた赤毛の青年は、小さく溜め息をついた。
「あっ!あとロシアは寒いから防寒具を忘れちゃダメだよ!」
「わかってるさ〜」
後ろから聞こえてくる声に対し、赤毛の青年は右手をひらひらと振って応えた。
「はぁ〜あ…」
自室に着いた時にはさっきよりも深く濃い息を吐き出す。
そうでもしていないと胸の辺りにある、モヤモヤしたものが気管に詰まりそうだった。
「…明日はユウも任務無かったのになぁ」
ドアに寄り掛かったまま身体の力をゆっくり抜いていくと、重力に逆らうことなくズルズルと床に座り込んだ。
ラビと神田の関係は、仲間であり恋人でもある。そしてその前に数少ないエクソシストだ。
そうなると実力のある二人に任務が頻繁に入るのは可笑しくない。
むしろ入らない方が可笑しいぐらい多忙な日々を過ごしている。
そんな中、明日は任務の予定は無し!そして愛しい恋人もまた、任務の予定は無し!という滅多にない休日。
だから明日はゆっくり二人の時間を過ごそうと、昨日言ったばかりだった。しかも自分から…
次に会えるのは一体いつになるのか。そんなことを考えていた。
「任務…か…」
次っていつさ?
ラビは床に下ろしていた腰を上げ、神田の部屋へと向かった。
自分達は恋人同士である前にエクソシストなのだ。任務に行って必ず生きて帰って来るという保証はどこにもない。
だって今は戦争中だから。
そんな自分達に『次』を期待していいのだろうか?
もちろん一般人にもそれは当てはまる。けれど確率があまりに違い過ぎる。
今は戦争中。
そんなことはわかっている。
理解もしている。
だけど自分はもう知ってしまったのだ。
君の温もりを。
明日の任務で命を落とす事はないだろう。なんせ近くの湖の周りにレベル1のアクマが2、3体目撃されただけなのだから…。
でももしそこにアクマの大群が居たら?
そこにノアが居たら?
簡単な任務なのはわかっているのに、こんな突拍子もないことを考えてしまう程会いたくて堪らない。
「はぁ…はぁ…」
気付けば神田の部屋の前。
しかも自分が気付かぬうちに小走りになっていたみたいだ。少し呼吸が乱れている。