Novel

□似た者恋愛気質
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 ここはセフィーロ。
 ポカポカと陽射しの暖かなこの日、イーグルは一人セフィーロ散策に出ていた(クレフとランティスの隙を突いて。勿論無断)。お城ではプレセアやアスコット達が大騒ぎしていたが、本人は知らぬが仏。
 自国にはない自然の森を気ままに歩き、見付けた小川で水を飲む。冷たく澄んだ流れに満足し、さて次はどこへ向かおうかと顔を上げた時だった。
「…花と、果物―――?」
 遥か上流から、色とりどりの花と様々な果物が流れてくる。どれも茎や葉がついたままで、熟れすぎて落ちたにしては不自然に見える。手近な所へ流れてきた物の中から赤い実を掬い(花ではなく)辺りを見回すが、人の気配もない。
 暫く待った後、彼はその手の果実をおもむろに―――かじった。
「あ、美味しい」
 移動するはずだった小川の淵へと腰を降ろし、甘酸っぱい実を堪能する。皮ごと食べられる果物などオートザムにはない。ちょっとくらい躊躇っても良さそうなものだが、イーグルは流れてきたままを頬張っていた。
 小さなヘタと種だけになったものを見て、少し考える。これは自然のものだから流してしまえばいいのだろうか。それともゴミとして持ち帰るべきか。
 悩む彼の目の前を、ある程度の間隔を置いて花と果実が度々流れていく。どう考えても自然には起こり得ない現象だ。まるで誰かが、故意に投げ落としているかのような―――。

 ふと、遠くで水音がした。次いで聞こえる、泣きそうな女性の声。慌てて探せば、上流へと続くカーブの辺りの川中にその姿を見付けた。
 素早く立ち上がり、駆け寄って自分も飛び込む。180センチの長身を誇るイーグルでさえ腰まで水中に沈む深さである。女性は胸上までくる水面を掻いて必死に進んでいるようだった。
「大丈夫ですか!?」
 腕を取って声を掛けると、女性はそこで初めてイーグルに気付いて驚いた。
「え?…―――あっ!!」
 一瞬目が合ったが、すぐに女性は下流を振り返って声を上げた。サラサラ流れゆく先を見て、ガックリと肩を落とす。その背中に、何やら籠らしいものが背負われ水流を受けて浮き沈みしていた。
「…あの…何をされてるんですか?」
 出で立ちといい、見た所の様子といい溺れていたわけではないらしい。しかし全身ずぶ濡れな女性が平常であるとも思えなかった。
「あ、いえその…」
 我に返って口を開いた女性の後ろから、また漂流物が流れて行く。お互い視界に捉えたようで顔が自然とそちらを向き―――女性がその一団に飛び付いた。
「もう!いつまでやればいいのよ!」
 腕に抱え込み、愚痴りながら背中の籠へ入れる。半ば以上が水中に沈んだ籠の中で、果物がぷかぷかと浮かんでいた。
 辺りにもう漂っていない事を確かめ、女性は漸くイーグルに振り返った。
「あの、ご覧の通り拾い物をしているだけなんです。心配して下さってありがとうございます」
「…いえ、それならいいんです」
「服も濡れてしまいましたよね…ごめんなさい」
 言って頭を下げる女性の籠から、流れ出て行く果物。
「あ!!」
 気付いた女性は急いで取り戻そうとするが、掴みきれなかった数個が下流へと流されて行った。泣きそうな顔で見送る姿に苦笑しつつ、イーグルは彼女の『拾い物』に終わりがなさそうだと思った。
「…失礼します」
 断ると同時に水中へ屈み込み、女性の膝裏と背中を支えて抱き上げる。当然、女性は驚いて悲鳴を上げた。
「な、何するんですか!?」
「そのままじゃ、いつまでも拾い物が終わらないでしょう?」
 そのまま彼女を川岸へ降ろし、上着を脱いで掛けてやる。背中の籠には、ほとんど何も残っていなかった。
 呆然と見つめてくる女性に微笑んで見返す。
「袖がちょっと濡れてるかも知れませんけど、それ使って下さい。女の子が身体冷やしちゃダメですよ」
「で、でも、私…!」
「拾い物は、僕がやります。お詫びも兼ねて」
 遮って籠を下ろさせながら笑い掛けると、女性は頬を染めて固まった。その隙に身を翻し下流へと泳いでいく。
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