Novel

□僕らの上に見える空
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 お茶会までの時間潰しに城を見物していたというオウル。3人が到着したならもう頃合いだろうと促され、連れ合って広間へ戻った。
 道すがら彼が語ったように、イーグルは既に腰を落ち着けて、様々な祝辞に応えている所だった。装いはセフィーロで過ごす為誂えた、白くゆったりとしたローブ姿だ。
 入口の光達に気付いて、イーグルが手を挙げる。ランティスもその仕種で光の元へと歩みかけたが、隣で微笑む青年の姿に立ち止まった。日頃から寡黙な男ではあるが、口数が少ないだけで中々親しみやすいランティスが唯一苦手な相手。それが、親友の片割れオウルなのだ。
 勿論あのイーグルの双子である。些細な動揺を見逃すはずもなく、笑顔で自ら歩み寄って話し掛けた。
 オウルにとってもランティスは替えがたい人物なのだ。多少、表現の仕方を誤っている事も自覚の上で、敢えて過度に構ってしまうのは偏に反応が面白いから。
 何だかんだで苦手にはしていても、拒みきれないランティスの人の良さを知っているからこそである。
「久しぶりですね、ランティス」
「…ああ」
「キミも相変わらず無口ですねー。もうちょっと愛想よくしないと、女の子に嫌われますよ」
 わざわざ顔を覗き込むようにして喋るオウルに、視線を合わせないよう顔を背けるランティス。
 明らかに遊ばれているランティスの姿に、周りは驚きを隠せない。特に、海と風は初めて見たオウルに些か興奮気味だ。
 プレセア、カルディナと身を寄せ合いヒソヒソと話し込む。
「何か、イーグルとはちょっとイメージ違うわね。顔はそっくりだけど」
「私達も彼を初めて見た時は驚いたわ」
「言葉遣いも少し違うようですわね」
「いやいや、あの兄ちゃんかなりエエ性格しとるで…ランティスがたじたじや」
 唯一楽しそうに傍観しているイーグルの袖を引き、アスカがそっと耳打ちした。
「…止めてやらんでよいのか?」
 隣でサイユンも心配そうにしている。
 二人に微笑みかけ、しかしイーグルは首を横に振った。
「あれがオウルなりの愛情表現なんですよ」
「ま!仲良しさんなのね」
 タトラがのほほんと手を叩く。姉のそんな様子を見て、日頃同じようにからかわれているタータは溜息を吐いた。
「しかしイーグル殿、あれでは些か気の毒ではありませんかな」
 チャイアンに次いで、クレフまでもが口を開く。
「イーグル、遊んでないで止めんか。いつまでも終わりそうにないぞ」
 確かに、視線をやればオウルは光を巻き込んでランティスをからかっている。面倒見の良いフェリオが仲裁に立ったようだが、彼も風を引き合いに出されてか落ち着かない様子だ。
 アスコット、ラファーガに至っては到底太刀打ち出来ないと悟って距離を置いている。
 イーグルが苦笑して、もう一度首を振った。
「僕よりも、適任な人が来ましたから」
 言って眺めた先には、NSXから運んで来たらしいお菓子満載のワゴンを押したジェオと、祝いの席だからと言い張って多量の酒を抱えたザズの姿があった。

 部屋に入るなり、ザズはおもむろに腕の中から床へとボトルを降ろしジェオのワゴンを受け取る。
 無言の連携で身軽になったジェオがつかつかと歩み寄り、オウルの耳を摘み一喝した。
「お前は何遊んでんだ!」
「いたた…ジェオ、いきなり何するんです」
 不自然な体勢で振り向かされたオウルが抗議の声を上げる。
 そんな声には耳も貸さず、ぐいぐいと引っ張って歩くジェオを指してイーグルが「ね?」と微笑んだ。
 周囲はまたも絶句である。
 イーグルの横まで連行して漸くオウルを放してやると、静かに言い付ける。
「お前ら、手伝わねぇんならどっちも大人しくしてろ。手間を増やすな。いいな」
「…はい」
 神妙に頷くオウルと、笑っているイーグル。二人を交互に見据えた後、ジェオはワゴンの元へと戻り支度を再開した。
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