□放課後の楽園
2ページ/3ページ

「先生…」

『…さ、猿飛 …あ、アレだ 忘れもの探してんだっけ ほ、ほら 早く探さなきゃなっ』

「もう、見つけました」

『え?どれ?』

「ここに在りました」

『ここって…何触ってんの…猿飛……ん? 忘れ物って、俺ェ〜!? 』

「明日から先生に逢えない毎日が始まってしまうなんて…耐えられません!…先生、好きです…」


驚いている先生の顔

それを見上げてる私

見つめ合う二人の横顔を夕陽がなでる

温かい色に包まれながら今、私の事だけを見てくれている

それだけで嬉しい筈なのに…駄目ね…先生の事になると欲張りになってしまう

もっと、もっと先生…
……貴方の事が知りたい

そして…先生…

私の事どう思っているの?
やっぱり先生にとっては、たくさんの生徒の中のひとりでしかないのかしら…



『……猿飛 俺も一応、健全な男だからな これ以上お前とくっついてるとよォ 歯止めが効かなくなるっつうか…止まらなくなンだよ』



…今更ながら緊張してきた
立っていることすら…

このまま崩れてしまいそう

『おっと 大丈夫か 猿飛…てか よぉ お前、自分で何してんのか、分かってんの?』


倒れそうになった私は、先生の広い胸に助けられた


「…先生 あの…」


ありがとうの言葉と
ごめんなさい…どちらを伝えたらいいのか分からなくて…


ただ、うつむくことしか
出来ない…先生の腕の中で

その先生の両手に、強い熱を感じた


思わず、顔を上げる


…先生の顔が近くて…恥ずかしい…


いつもと違う…真剣な眼差し


怒らせた?


『…参ったな 自覚なしかよ…お前ねー誘ってんのよ 男をさ 分かるかァ?』

――え?


先生の眼を、もう一度確かめる


…違う 知らない男の人の眼だ…


…少しだけ怖い


でも、でも―――


目の前の、私の腕を抱えている人は―――


紛れもなく、先生で…


私の大好きな銀八先生…


『…猿飛 』


「いいわ…先生なら」


『もう、俺 スイッチ入っちゃったからな 後悔…すんなよ』


「――本望です」


互いの唇が重なり合った瞬間から

閉ざされていた楽園の扉が少しずつ開いていく


禁断の果実を口にしてしまい、追放された二人のよう

『…二人して楽園から堕ちてく…か それも、まァ いーかもな』


――先生、貴方となら
どこまでも行ける―――


私達は、もう戻れない
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ