2010銀誕記念

□無題
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『 …………………… 』





そうだった あれは、どれくらい前だったか 不可思議な出来事が起こったあの日



孤独で不安感で一杯な俺には、冷たく眩しすぎる月夜の晩の事だった



月影が作るのは、目を疑う程の小さなシルエット…有り得ない耳の形と…オプションの長いシッポ…



はたから見れば、誰が見たって、テメェーは猫以外のナニモノでもない



ニャ…いや、なんてこった!



猫は嫌れェーじゃねぇがよう…まさか俺が…この俺が、なんでまたこんな姿になってしまったのだと思い悩まされる



夜のアスファルト道が、肉球にしこたま冷たく感じる


普段なにげに履いているブーツの有り難みが、身に染みた



ふと、道に落ちてる木の実を見つけ、思わず飛び付き、丸い手で掴もうとした



指が思うように動かない ぷにぷに肉球が邪魔をする


猫シンクロ化が進んできたのか、気がついた時には、小さな木の実を転がし夢中で遊んでいる俺がいた



最後の一打が強すぎたのか、獲物はコロコロと車道に転がっていき…



前方から走ってきた車の下敷に…



車は、タイヤの跡と…コナゴナになってしまった木の実だったモノだけを残し、去っていった



『……ドングリは、渋いんだよな 生では食えねぇしな……』



淋しさと空腹を紛らわすため、賑わう繁華街の路地をシッポをうなだれ、トボトボと歩いていた



すると、いきなり「キャアァァァ〜 ぎ、銀さぁーん!!」と雄叫びをあげて駆け寄ってきたのはアイツだった



『ニャ?ニャニャ?フニャララ、フニャウ?(え?何?コイツ、猫の姿になっても俺って解るの?)』


ほうけた顔で見上げる俺に、くっつくくらい顔を近寄せてマジマジと見つめるコイツは、何故かホッと胸を撫で下ろした


「あーもう、びっくりしちゃったわ 銀さんの生首が落ちてるのかと思っちゃった」


『ニャニャニャ、フニャラフニャウッ(こっちの方がびっくりしたってーの デカイ声出しやがって、まったくっ)』



早合点な天然くノ一は、しゃがみこんで俺の目線に自分のそれを合わせ、再び語りかけた



「それにしても、本当に銀さんの髪の毛ソックリな毛皮を着てる猫さんね ふふふ、可愛いわ」


『ニャ〜ウ〜(なあ、俺…腹減ってんだ)』



本職以外の事は鈍そーなコイツに伝わるかどうかは、ちょっとした賭けだったが…



駄目モトで、すがる様に鳴いてみた



「…あら アナタ、お腹空いてるの?じゃあ、ウチ来る?ただし、一晩だけよ」


スッと立ち上がり、スタスタと家路に向かうコイツ



…しかし、言ってみるもんだな まあ、これで今晩のメシには困らないけど…



でもよ…なんつーか…コイツ…行きずりの男をホイホイと簡単に家に上げるなんて…トンだ尻軽だな




…あ コイツにとって、今の俺はタダの野良猫にしか見えねぇ〜か



ま、いっか とりあえず、メシが先決だ



(続く)
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