銀誕2008
□其の三
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「はい、お茶のお代わり」
そう言って新八が差し出す、俺の湯呑みを改めてジックリと見た
…そういや、湯呑みも…箸も…アイツが使ってたのって来客用だったな…ああ、そうだ…なにもかもが…
アイツ専用の物なんて、何ひとつ無かった…大体にして、アイツは自分のが欲しいなんて―――
ヒトコトも言わなかったから…そのままにしてた
…良く考えると、酷でェ話し…だよな
事実、ほとんど一緒に住んでる様な女に対して…
都合のいい女…そんなつもりじゃあ無かったんだけどよ…なんか、めんどくさいし…
そのうち、追々な…って思ってるうちに… 結果、そうなっちまったんだな
…なんか…俺、やっぱ酷でェ男かな… 駄目な野郎なんかな…
モテねぇー理由って、こんなんかな こんなところが、駄目なんかな…
…ま、今更 別の女に好かれようとも思わねェが
――俺とアイツが、この万事屋で過ごしてきた時間…
アイツと俺とで、一緒に刻んできた時間…
その証しが…目に見える証しが、手に触れる記しが、全く残って無ぇ
あるのは、俺の中に残っている、記憶…と思い出…だけ
この身が覚えてる、凛とした―――あの花の色の記憶
名残惜しいが、口の中に残る甘さを渋い茶で流して、俺は立ち上がった
『あー ジャンプ… 忘れてたなー そうだ、ジャンプ買ってくるわ』
アイツがいない、この空間から逃げ出したくて―――