Wシリーズ
□冬の華
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気が付くと、あの公園がある駅までの切符を買っていた
別れる前に、よく二人で逢っていた、あの小さな公園
…あの頃のままだろうか…
流されるままに、電車に乗り…今、その街の小さなファーストフード店で暖を取っている
…思い立って、この街に来たものの… 今更あの場所に行って、どうするの…別に何も変わらないじゃない…今の現状は…
そんな事は、分かってる でも、頭でそう考えたって…心は、そうはいかない
受験生だから、こんなところで大事な時間を潰し…ましてや恋愛に現をぬかしてる暇も無い筈なんだろうけど…やはり、気になってしまうものは、仕方がない
去年とは違う私―――
夏に恋を知り、愛へと育む事も出来ずに…秋には失ってしまった
甘い愛しい痛みも覚え… 今はそれが、辛い哀しい痛みとして心に残る
そうして迎えた、この季節
…寒い…
「やるべき事」は、たくさんあるのに 「する事」がみつからない
…現実逃避のために、気まぐれに始めた編み物も…今、終えてしまった…
…どうしよう…なんか、所在ないな…
…感傷に浸ってばかりでも、しょうがない…か
コーヒー一杯でそんなに長居も出来ないから 参考書でも買って帰ろう…
もらってくれる人もいない手編みのマフラーを、無造作に手提げ袋に突っ込んで、店を出た
古い小さな書店で、とりあえず参考書を一冊選んで買い 師走の人々が、せわしなく行き交う駅前に向かい歩いた
…どうしても気持ちが、あの公園に向かってしまう
せっかく、この街まで来たんだから…ちょっとだけ寄ってみよう…かな…
別に、何があるわけでもないけれど
あの頃の楽しかった時間をもう一度、私は確かめたいのだろうか…
駅の直ぐ隣にある公園の入り口から、二人で過ごした、あの場所を探す
枯れ色の落ち葉が敷き詰める煉瓦の道を、ゆっくりと確かめるように歩く
近づくにつれ、そのベンチに人影がある事に気付いた
…まさか ううん…でも…あのシルエットは…私が、見間違う訳がない…わ