イベント集
□サンタクロースにお願い
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「…お父さん あのオジサン、さっきからブツブツひとりで喋ってるよ」
「駄目だよ 指さしちゃ あのオジサンはね、寂しい人なんだ そっとしておくのが一番なのさ」
「…そっか…カワイソウなオジサンなんだね」
「そうだね さ、早く帰ろう 家でお母さんが、ご馳走作って待ってるぞ」
「うん」
買い物帰りだろうか、裕福そうな親子が、沢山の紙袋とクリスマスケーキとおぼしき箱を抱えて通り過ぎて行った
…ヒューと、一陣の冷たい冬の風が、足下をすりぬけていく…
…お、俺ァ いつから呟いてたんだ…?恥ずかしい心の声が口からダダ漏れ…
それに…オジサンって…俺、まだまだ若いつもりなんスけど……酷くねっ?
…ちょっ、暫く立ち直りそうもねぇ… なんか、マジで泣きそう…
賑やかな街中を歩くのは、綺麗に着飾っている楽しそうなカップルに、幸せそうな家族連ればかり
気がつけば、眩いばかりのクリスマス・イルミネーションの光りの束のド真ん中、…俺ときたら…いつもと代わり映えのしねェ着流しで…そんな男が一人、街に ぽつんと浮いている…
シャンシャンシャンとジングルベルのメロディーが俺の周りを虚しくリフレインする…
ダァァァァァーッ ウルセーよっ イイーんだよっ
俺は、そういうの過去にタックサン嫌っていう程やってきたから、もう卒業なのっ いや、ホントッ
あ〜 寂しくなんか、ねェぞー 何?ホワッツ?寂しいって何?誰か俺に教えてくれっ!それって食べられるヤツ?美味しいのっ?
ああ〜この時期になると思い出すねェ…あの頃をさあ…俺も、ヤンチャしてた頃は大変だったなぁーうん
デートのカケモチね…金も続かねェが、体の方も続かねェーよ うん
あの頃は良くやってたよ…うんうん… う…ん……あれ?なんか…目から鼻水が出てきた…こりゃ、風邪引いちまったかな… いや〜今年の風邪は、質が悪いねェ〜
…ぐすっ なんだよっ ちぃとも寂しくなんか、ねェ〜ぞっ 俺ァ そうさ…ただ…虚しいだけ…だ…
もう、お家に帰ろう… この時期に街なんか歩くんじゃなかった…
お家で、おとなしくケーキ食おう… …そうだった!俺には、ケーキが待っている!なんてったって、特別なスイートちゃんが家で待ってんだかんな!あ〜楽しみだ
そうだ、急いで帰ろう