イベント集

□サンタクロースにお願い
2ページ/8ページ

「…お父さん あのオジサン、さっきからブツブツひとりで喋ってるよ」

「駄目だよ 指さしちゃ あのオジサンはね、寂しい人なんだ そっとしておくのが一番なのさ」

「…そっか…カワイソウなオジサンなんだね」

「そうだね さ、早く帰ろう 家でお母さんが、ご馳走作って待ってるぞ」

「うん」



買い物帰りだろうか、裕福そうな親子が、沢山の紙袋とクリスマスケーキとおぼしき箱を抱えて通り過ぎて行った


…ヒューと、一陣の冷たい冬の風が、足下をすりぬけていく…


…お、俺ァ いつから呟いてたんだ…?恥ずかしい心の声が口からダダ漏れ…

それに…オジサンって…俺、まだまだ若いつもりなんスけど……酷くねっ?
…ちょっ、暫く立ち直りそうもねぇ… なんか、マジで泣きそう…



賑やかな街中を歩くのは、綺麗に着飾っている楽しそうなカップルに、幸せそうな家族連ればかり

気がつけば、眩いばかりのクリスマス・イルミネーションの光りの束のド真ん中、…俺ときたら…いつもと代わり映えのしねェ着流しで…そんな男が一人、街に ぽつんと浮いている…


シャンシャンシャンとジングルベルのメロディーが俺の周りを虚しくリフレインする…



ダァァァァァーッ ウルセーよっ イイーんだよっ
俺は、そういうの過去にタックサン嫌っていう程やってきたから、もう卒業なのっ いや、ホントッ
あ〜 寂しくなんか、ねェぞー 何?ホワッツ?寂しいって何?誰か俺に教えてくれっ!それって食べられるヤツ?美味しいのっ?


ああ〜この時期になると思い出すねェ…あの頃をさあ…俺も、ヤンチャしてた頃は大変だったなぁーうん
デートのカケモチね…金も続かねェが、体の方も続かねェーよ うん

あの頃は良くやってたよ…うんうん… う…ん……あれ?なんか…目から鼻水が出てきた…こりゃ、風邪引いちまったかな… いや〜今年の風邪は、質が悪いねェ〜


…ぐすっ なんだよっ ちぃとも寂しくなんか、ねェ〜ぞっ 俺ァ そうさ…ただ…虚しいだけ…だ…



もう、お家に帰ろう… この時期に街なんか歩くんじゃなかった…
お家で、おとなしくケーキ食おう… …そうだった!俺には、ケーキが待っている!なんてったって、特別なスイートちゃんが家で待ってんだかんな!あ〜楽しみだ

そうだ、急いで帰ろう
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ