□抱きしめるといい匂い
1ページ/5ページ

「銀さーん
今から出掛けるんですかー今日は夕食当番ですからねー忘れないで下さいよー」



玄関で靴を履いている俺に事務所兼リビングから新八が声をかける


横着しやがって


最近ナマイキだな


『おう〜
わかってるよ、新八クン
まったく、小姑みたいに細かい奴だな そんなんじゃモテねぇーぞ んじゃ、ちょっと行ってくるわ
留守番ヨロシク〜  』


「アンタに言われたくねーよっ」


年中無休のツッコミ担当のそれを背中であしらい、万事屋を出る


カンカンカンと階段を降りるいつもの音も、心なしか弾んで聞こえる


ふっ またやってきやがったな、この日が


た〜だ〜でチョコ貰えちゃったりする日!


まァ〜さァ〜に、銀さん


この世に生まれてきて一番嬉しい日かもなっ!


お〜し、何個貰えるか数えてみるか


まず、ババアだろ
…最初に浮かぶところが、なんだかなーしかも、家賃滞納してるからナイかも…


猫耳はナイな…


お妙
…手作りだったら、ちと考え物だな…ゴリラにあげよう うん、アイツだったら絶対食べる もし死に至っても、絶対喜んで食べる…


神楽
多分チ※ルチョコ一個だないや、逆に俺に買わせるんじゃねぇーの?!



手堅い義理チョコゲッツはこんなとこか…って手堅いかァァァー オイッ!


……認めたくないものだな俺って全然モテナイ……


…待てよ 一つある


まあ、欲しいとも思わないけどね


確実に一つは豪華な本命チョコ貰えるだろうな


まあ、欲しいとは思わないけどね


くれるものは頂きましょうかね


こと、甘味に関してはね!

いやいやいや
別にどうしても欲しいってわけじゃないけどよォッッとッ


あ、あぶねっ!



万事屋から歓楽街へ行く道すがら、ずっとチョコの事を考えていた俺は、前から人が来るのも分からず、ぶつかってしまった


「ドン」


その拍子にバラバラと相手が抱えていた紙袋から菓子やら煙草やらがちらばって落ちてしまった


相手はしりもちをついている



『あー すみません ちょっと考え事してたもんで』


道に落ちた物を拾いながら、相手の顔に目をやった


「あいたたた ん?銀さんじゃねーか

何、ボーッとして歩いてんの?

また、昨日見たDVDの事でも思い出してたんじゃないのー?

アンタも好きだねー 」



ぶつかった相手はマダオ…もとい、長谷川サンだ
パチンコ仲間



『よう!アンタか 凄い景品だな!確変大当たりきたのか?スゲーな今日は何やったの?やっぱ、エヴァ?それとも、仕置人?』


なんだかウキウキして問いかける俺に、長谷川サンは応えた


さも得意げに ちっ


「おう!もちろん、エヴァに決ってらァ!昨日から目ェ付けてた台があってよっ少しつっこんだらすぐ回りはじめてよォ
暴走モード覚醒モード確変突入なんと、ミッションモードでカオルも出てきちゃって、ウハウハよ!あの台、未だ未だ出るぜェ〜俺ァ、ちと用事があってな 泣く泣く切り上げてきたんだがな        」


いつもよりグラサンの奥の目を細めて憎々しげにさらりと自慢しやがった
…あれ?アンタ、エヴァに出てない?


『うぉ〜俺も見てぇ!レアなカオルッ なかなか来ないよなぁ いいなー 俺も行こっかなー …でも、回す金無ぇしなぁー  』


うなだれる俺の頭にポンと長谷川サンは小さい箱をのせた


「やめとけ もう出る台は残ってねぇ 今から行っても取られるだけだ 明日、新台入れ換えもあるからな
ほら、ポッチーあげるからそれに、二人連れだともっと出さねーぞ、あの店

まぁ、デートの続き楽しんでくれや、邪魔したな!

ざぁ〜ん〜こぉ〜くな〜
フンフフン〜フフン〜」


鼻唄を歌いながらいっちまったよ、あの人


いいなー俺にもツキがまわってこないかな…あれ?


長谷川サン今、変な事言ってなかったか?


デートって…?あぁ?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ