□警鐘
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ったくよう…


朝っぱらから
ババアのシケタ面なんて
拝みたくないのよ
俺としてはさぁー


あぁ〜 萎えるね
何がって?
そりゃあ決まってる
じゃねーか…


体の芯にあるものよ
俺のたま…魂がよ



「今日呼ばれた理由は
 分かってるだろうね
 銀八…いや、坂田先生」

滅多に来ることのない
ババアの部屋
…もとい理事長室


出勤そうそうに
久々呼び出された


『あ〜、化学室で
 スルメ焼いて
 酒飲んだの
 バレました?   』


「…まだそんな
 ガキみたいな事
 やってんのかぃ
 違うよ      」


うーん…なんだろな


色々身に覚えがあるからな有りすぎて
わけわかんねぇー


あ、もしかすっと
アレか?


『バ…
 理事長が育ててる
 菊の花、お浸しにして
 食っちゃった事? 』


「あ〜アレね
 美味いからね

 あの菊…ってオイ!
 何勝手に食ってんだぃ

 ったくこの男はホンット 食い気ばかりだねぇ」


理事長は呆れた様子で
煙草に火を点けた


オイオイ
あんまり怒ってばかりだと顔に皺が張り付いて
取れなくなるぞ


…ま、手遅れだけどね
今更



「まぁ、掛けな
 てか、アンタ何時も
 一言多いんだよ

 心の声がだだ漏れだよ  皺くちゃババアで
 悪かったね    」


ヤベ…つい、目で
語ってしまったか
ま、いっか



俺は、この部屋に
鎮座している、いかにも
座り心地の良さそうな
高級ソファに
遠慮なく掛けた


「さて、と… 
 一部の男子生徒の間に
 出回ってる写メール
 だけどさ
 もう見たかぃ?  」


ゆっくりと
煙草の煙りを吐き出し
俺をじっと
見据えるババア


あれあれ、嫌だね〜
女の煙草飲みは
別に嫌いじゃねーが
アレだね


鼻から煙り出した時点で
おもいっきりアウトだね


俺的に 女としてオシマイじゃねぇーの?



「アタシの事は
 いーんだよ
 ほっといておくれよ

 悪かったね
 女終わっててさ  」


…やべー またやっちまったか てか、ババァ、エスパー?


「あ、勝手に来客用の
 葉巻を吸ってんじゃ
 ないよ 高いんだよ
 それ! ったく
 油断もスキもありゃ
 しないねぇ
 
 …その様子じゃ未だ
 見てないようだね


 ほら、御覧よ これ」


ババアが差し出した携帯の画像…


前に、似たようなん見た気ィするな


…沖田か
こんな事するヤツは多分
アイツしか居ねぇ


チッ、やりやがった
…期限は何時だったっけ

ん?待てよ
今日、何曜日だ?やべ…


タイムリミットは一昨日だった…
うっかりしてた、俺…



「フン、その表情
 やっと分かったようだね
 画像を少し加工処理して る様だから

 不鮮明でやや分かりづら いけど
 男の方は間違い無くアン タだね      」



教室とおぼしき場所で
抱き合っている男女


白衣を着てる後ろ姿の男はまさしく俺で


辛うじて、あやめの顔は
写って無い


だが、勘の良い奴だったらすぐに解るだろう


セーラー服の肩より長い
あの素直な髪と背の高さで

クソッ
俺は手の内に滲み出てくる汗を握りしめた



『これ、アンタんトコまで 送られてきたのか? 』


「いんや ちょっとした
 筋から入手したのさ」



「…銀八 分かってるよね ウチの規則をさ まあ
 バレない様に上手くやっ てくれりゃ アタシも
 見て見ぬふりするよ?
 そこまで野慕じゃない」

『だったら…』


「ただ、今回は
 こんな携帯の画像がある んじゃねぇ…
 ちょっと広まり過ぎるか もしれないねぇ

 相手はだれだい
 大方、察しはついてる
 けど、アンタの口から聞 きたいよ     」


『………』


ここで全てを話せば
どうなるか充分承知だ


悪りィ、ババア
俺には、出来ねぇ



俺はただ
理事長の目をじっと見る
だけで精一杯だった



「やれやれ、ダンマリかぃ 分かったよ これ以上は 聞かないよ ただし
 PTA側にバレた場合
 それなりの処分は…

 覚悟しときな   」
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