□予感の朝
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―――これで終りにしよう今度会う時は、以前の様にただの教師と生徒の関係で

――さよなら…あやめ…
いや、猿飛――――



「ええっ?先生
 ちょっと待って!」




あ…なんだ…夢か…
なんて嫌な夢…


変な汗かいちゃったな
えーと、今何時かな


あー!!
先生との待ち合わせまで
二時間も無いっ
急いで支度しなきゃ!




天気の良い日曜日
電車に乗って出かける


短い距離だけど
電車に揺られてる間に
あれこれ考えることが
楽しい


待ち合わせは、午前十時
場所は、駅を降りてすぐのあの小さい公園


意外と穴場で、学校関係者に未だ出会した事がない



久しぶりに外で逢うなあ


海に行った時以来かな
これって一応、デートよね


嬉しいなただ公園で
逢うだけなんだけど




…あ、先生もう来てる


と言うか…
私が若干の遅刻だわ…


とりあえず
急いで駆け寄ってみる




「先生、ごめんね!
 待った?     」


『いや、俺も今来たとこ』


嘘…
ベンチの足元に煙草の
吸い殻が沢山落ちてる…



ずっと前から待ってたの?

気をつかってくれたの?
優しいね、先生…



『危ねぇーから
 走ってくんなよ
 転ぶぞ
 おまえドジだから
 …ほら     』


やった♪
ジュース買っててくれた!…いつもより二割増し
優しくない?


「ふふふ」


先生の横にピタって
くっついて座っちゃった


いいよね、知ってる人が
誰も来ないトコだもん


じっと先生の横顔を
見つめて見る


『…なに?』


「なんでもない」


『何か言いたそうだけど』


「えーなんか…
 白衣着てない先生って
 なんだか…    」


『なんだか、なんだ?』


「違和感があるっていうか 別の人みたい…   」

『そーかぁ?
 でも、ま、俺だって
 いくらなんでも
 プライベート時はなぁ』


ストライプの
カジュアルシャツに
チノパン



ラフな格好も似合うね
先生
シャツのブルーが
爽やかだよ



でもね…本当は…最初
白衣姿に心奪われたの


でも、この事は内緒



『んー?もしかして
 おまえは白衣フェチ?』

わ、びっくりした!
飲んでたジュース
吹き出しそうになった!


「ええっ?
 滅相もございませんっ」

心読まれたと思った
先生、エスパー?


『ホントかぁ〜?
 白衣着てる教師だったら 誰でもヨカッタんじゃ
 ねぇーの?

 例えば、数学の
 坂本センセとか
 服部センセーとかさぁ』

「いや、ソレは無いです」

いつになく、キッパリと
言い切ってしまった
だってねぇ…
有り得ないよ


『…おまえねぇー 
 間髪入れずに
 否定すんなよ

 一応、社交辞令で
 考えるフリぐらいしろよ
 まぁ、良いけどよォ』


あ…先生、照れてる
いつもより強く
ガシガシ頭掻いてる
カワイイ…


「嘘でも冗談でも
 先生以外の男の人を
 好きだなんて言えないわ
 そんな、心にも無い事」


ちょっと真剣な
眼差しで言ってみた
先生の反応は?


『…そっか 悪かったな』

…先生 そこは謝るトコ
じゃないよ フツウ
『ありがとう』じゃない?

気のせいかな?
いつもより元気が
無いみたい…



「先生、お腹空かない?
 ちょっと早いけど
 お昼にしようよ
 おべんと作ってきた 」


努めて明るい笑顔を作り
持ってきた紙袋を
先生の前に差し出した


『そーだな そーいえば
 なんか腹減ってきたな』

「ちょっと寝坊したから
 手抜きだけど
 あ、大好きな
 甘い玉子焼きはあるよ」

『んー?
 手抜きじゃない時って
 あったかぁ?    』


出た!
センセーのいぢわる発言!

自分、料理得意なもん
だから…


「ひっどーい、先生!
 いつも、真心込めて
 作ってるんだよ!

 …うん、真心だけは…」

『はいはい、分かってるよ あやめは何時も
 一生懸命だよな

 どれ、いただきま〜す』


先生の大きな温かい手で
頭をくしゃくしゃに
撫でられた


そう、まるで
小さい子をあやす様に


また、子供扱いですか
でも…ま、いっか


あれ?先生の口癖
うつっちゃったかな
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