綴
□落陽
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――どれくらいの時間が経ったのだろう―――――
うだる暑さと喉の渇きで、まどろみの中から現実に戻された
朝方から煩わしく感じていた油蝉の声が
もう聞こえない
代わりに、買い物に出掛ける女房達の声が窓から入ってくる
どちらかと言えば、こっちの かしましさ の方が
煩わしいか
ふと見上げた
安物のカーテンの隙間から垣間見る空の色は――
くすんだ浅葱色
そろそろ日が落ちる頃か
かったるい体を起こすと、こめかみから汗が
止めどもなく流れる
じとりとした手の甲で
それらを拭い
ベッドの端に腰を下ろす
晩夏の暮れに吹く風が
窓からさらさら流れて来る
それは熱った肌を遠慮がちに冷ましてくれる
――ゆっくりと涼んでいく
少し楽になる
残り少ない煙草に火を点け
天を仰ぐ様に
一息ついた