譚
□月燈幻夜―後編―
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カラン コロンと
下駄の音
ふわり ふわりと
夢の中
貴方の
背中でみる夢は
遠い昔の子守唄…
『おーい、さっちゃん
家どこ? 』
うつらうつらとして
未だ頭がはっきりしない
あやめは
夢の向こうで
銀時の声を聴いていた
肌にはやわらかい体温
広い背中からは
懐かしいお日様の香りと
仄かな酒の匂いを感じて
ゆっくりと目を開けると
直ぐ前には
ふわふわの銀色と
白い狐の面
( …私、
狐につままれてる…?
このまま、どこかへ
拐われてくのかしら…
それでも、いいかな
銀さんに
振られちゃったから
もう なんだか…
よく わからない… )
縁日の賑わいがもう
大分、遠くの方になった
銀時が自分をおぶって歩いている
あやめは、今の状況を
把握するのに
暫く時を要した
『…しかし
意外と重てェーのな
さっちゃん 』
この一言で
完全に目が覚めたあやめは銀時の背中の上で暴れる
「きゃっ、銀さん
…降ろして! 」
改めて
やはり銀時は男だと
あやめは思い知る
人より高い戦闘能力があると自負しているが
流石に彼には敵わない
こういう時に
男女の力の差を
歴然とつきつけられる
あやめがどんなに
もがいても、銀時の腕は
びくともしない
『いーから、いーから
おとなしくしてなさい』
「…もう…」