□月燈幻夜―前編―
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欲望渦巻く街
ここは新宿かぶき町


数ある店のひとつに
「さっちゃん」こと
猿飛あやめが勤める
くノ一カフェもある


カフェの従業員用出入口に銀髪の男がひとり
人待ち顔で立っていた


男の名は、坂田銀時

いわゆる何でも請け負う
便利屋
『万事屋銀ちゃん』
のオーナー


この界隈では、有名な遊び人『銀さん』で通っている


やがて、女が二人
仕事を終えて出てきた


セミロングヘアの色香漂うグラマラスな美女と

サラリと音がしそうな位に美しいストレートのロングヘアの美女


共に艶やかな浴衣姿


先に、セミロングの方が
男に気付いた



「あらん、猿飛さん

 彼氏のお迎えよン

 なんやかんや言っても  二人うまくいってんじゃ ない」


猿飛あやめは
困惑顔で相手に応じる


「急に、何を言い出すの? 脇さん

 二人って…
 私と銀さん?


 前にも話したじゃない
 …もういいの 


 …私
 振られたも同然だから

 彼、積極的な人
 苦手だっ…」


話を聞きながらも
脇というその女は彼女に
ウインクしながら
自分の親指で肩越しに
後ろを指す


「後ろ…?
 後ろに何がある…」


みるみるうち
頬に紅の華が咲く


あやめがその目で
見たものは――――


そう、男は彼女の想い人



『…よォ さっちゃん
 今あがりか?』


「銀さん…」


ただならぬ
二人の雰囲気を
「女の勘」で感じた脇は
切り出した



「さて…と、邪魔者は
 消えるとしますか

 じゃあ 猿飛さん
 またねン
 お疲れ様でした〜」


「あ、脇さん!今日は…」

足早に去っていく
彼女の背中に

戸惑い色を隠せない
あやめが
声を掛けたが


忍でもある脇の
身のこなしの速さには
届くはずもなく


その姿は
もうとっくに
見えなくなっていた
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