譚
□月光夜歌
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人知れず逢瀬を重ねる
誰もあの人と私が深い関係であることを、知らない
私も別に周知の仲でいることにはこだわってはいないし
なんにしろ、二人だけの時は別人の様に優しいあの人に不満はない
…薄く柔らかい唇
…羨ましい程にきめの細かい白い肌
…逞しい腕
そして…私だけに
見せてくれる、少年の様な はにかんだ笑顔
なんども、何度も重ねあって
お互いの躰の傷を確かめ合っても
心の深い奥底にある
「なにか」についてだけは解り合えないのだろう
結局、自分は「独り」なんだなという感は拭えない
――――孤独――――
…何故?…どうして…?
確かに
今この時だけは愛されているはずなのに
あの人から伝わる、この温もりを
肌で、心で感じることができるのに…
淋しい想いは募るばかり
―――いつから私はこんなに脆くなったのか―――