2010銀誕記念
□無題
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「……ねえ 銀さん …今、何を考えているの…」
『 …ん ……なんかさ、前にも…こんな感じ…みてェのあったなあ〜と、思ってな』
仲秋の午後、整然と整理されたコイツの部屋
新しい畳の香りのせいか、空気が澄んでいるみたいで…胸がスーっとして居心地がよい
いつになく静かに目を閉じて黙っている俺に、あやめが遠慮がちに小さく声を降らす
少しハスキーで甘い囁き
障子の向こうからは、庭の木々に細かい秋の雨が静かに落ちる音がする
そして、微かに香るキンモクセイ
この、ゆるく心地好い退屈な静寂の中にいるのは…俺達二人だけだ
そう、今は二人の…二人だけの時間が流れている
着物姿でキチンと正座しているあやめは、いつもと違う趣き
あまりにもコイツの膝が気持ち良さそうだったから、いきなりゴロンと、そこに頭をのせ、くつろいでいる
始めはびっくりして、戸惑いを隠しきれない様なあやめだったが、次第に馴れてきたのか俺の髪を撫で始めた
柔らかな温もりが安堵を生み、徐じょに…緩やかに…軽い眠りへと誘う
「デジャヴ?あら、私は今日初めて銀さんを膝枕出来たのよ」
『…そうだっけ?……あ、悪ィ……なんか眠ィや…ちょっと寝る…わ…』
「…どうぞ」
薄く開けた瞼の間から見えた優しい微笑みを、残像として焼き付け
再び目を瞑る
―――次第に意識からは、秋雨の音さえも遠去いていった――――