銀誕2008
□其の五
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………今日も、やっぱり…来なかったな
宵の口もまわった頃、馳走をのせていた皿たちもその役目を終え、次々とテーブルの上から姿を消した
日頃の煩わしい事などを忘れさせ、綺麗サッパリと彼方へ流してくれる上等な酒も底をつき、
今は、ホロ酔いの心地良い余韻だけを体が楽しんでいる
万事屋のリビングは、常の状態に戻った
文字通り…宴の後…だな
さっきまでの、細やかながらも賑やかな誕生会という名目の宴会を行っていた時間が、遠い昔のようだ
部屋には、ケーキの甘い匂いと唐揚げやオードブル、…ダークマターの芳ばしい匂い…そしてアルコールの匂い…
すべての残り香が複雑に混じりあって存在し、それは何故か、虚しさに似た感を俺に与える
「…銀さん 洗い物終わったんで僕達、帰りますね 神楽ちゃんはもう寝ちゃったんで、布団に運びましたから」
『……おー ワリーな… 俺も… 眠みぃー…』
『銀さん、ソファーに寝ないでちゃんと布団に寝て下さいよ 風邪ひきますよ』
『………お?……おう ………カーコー カーコー』
『…ホントに仕方ないな』
深く溜め息をひとつ吐いて、新八は和室の方へ歩いていく
押し入れを開ける音がした 多分、毛布を持ってきてくれるのだろう
やがて、そっと優しく包んでくれる布の感触を実感できたので、ソファで目を瞑っている俺は、それが確信に変わった
「新ちゃん、お待たせ 後片付け、全部終わったわよ …あら、やぁね…この人ったら…
アレくらいの酒で酔い潰れて…だらしのない」
む…お妙のヤローうるせぇな…何にも知らねェで… お前に俺の気持ちが、分かってたまるかっての
こういう時は、女より男の方が繊細なハートになってるんじゃね?…あれ?…こういう時って、どういう時だ…?あれ?
…ま、いっか…どうでもいーけど、スンゲー眠みィ…
「さ、新ちゃん 帰りましょう」