銀誕2008

□其の三
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――…もう、どれくらいの時が経ったんだろう………アイツの姿を見なくなってから…―――



「銀ちゃん、ナニさっきから電話の前に つっ立ってるネ 依頼の電話でも、掛ってくるアルカ?
あ、さっちゃんアルカ?」

大人の無防備な背中に、遠慮無く子供が声をかける


…無邪気って、ある意味 残酷じゃね?


あー あらら?俺、いつから電話の前に居るんだ?
…いや、全くの無意識でもねぇんだが…な… あれ?…変だな〜 …あれ?


「神楽ちゃん! …銀さん、お茶入りましたよ …それから、これ…
さっき、お登勢さんからお団子貰ったんで皆で食べましょ」


『あ、ああ…』


黒い受話器にずっと置いていた手を、所在なく顎の辺りに持ってきてボリボリと掻いてみた


そして、やはり何時までも鳴らない電話に、背を向けた


多分それが、いつもの俺のスタイルであろう だらりとカッタルく、ソファにもたれて掛ける
と、目の前の二人がジッと俺を見る


んだよ、そんな珍しいのかァ 俺の顔 …んー? なんか付いてんの?


再び手で頬やら顎を撫で回す俺に、言葉をかみしめる様、ゆっくりと静かに新八が話しかける


「…銀さん、いつもみたいに真ん中に座ったら?」


 …あ 言われて、気がついてやんの、俺… 誰も座る事の無いスペース
…知らず知らずの内に、アイツの分を空けて座っていた


…今ここに居れば、必ず俺の右隣に座ってたからな…

『いいーんだよ、今日は ここに座りたい気分なのっ』


そう言って、テーブルの上の団子に手を伸ばした


 …ん…何だ何だ、違和感が…?いつもなら我先にガッついてるコイツらなのに…

未だ、誰も食ってねェんじゃね?


向かい合わせに座ってるガキ二人は、示しあわせたみてぇに、揃って手を膝に置き、
少々前屈みの状態で唾を飲み込みながら俺を見てる


何だよ、ゴクリッてスゲー音したぜ神楽 お前、どんだけ唾ためてんだよっ


…ったく、…なによ 何、銀さんに気を遣ってんだよ らしくねぇーよ、オメーラよう


いつもの感じでやってくれよ …調子出ねぇよ、まったく


『…オメーラ、食わないの?早くしないと全部食べちゃうゾ、神楽』


「た、食べるヨ もちろんネ!ほら、新八も食べるネ!」


ガツガツと神楽が食いだすと、やがて安心したように新八も串に手をつけた


…フッ ったくよう 余計な気を遣うなよ… 


団子を食いながら、何気なく家ん中を見渡した


無駄な家具など一切ない、質素な我が家


…でも、こんなに広かったっけ…な…
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