Wシリーズ

□フェール・ネージュ
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――突き刺すような冬の風


浮かれた頬を叩かれて、急速に我に返る街の中


雑踏も、キラビヤかなネオンも…総て視界から消えてしまい 心象風景は、吹き荒ぶ風の荒野




仕事の帰りに、寄ってみたのよ


一目散に駆けてきたの


少しでも早く逢いたくて


いつものように、ただ貴方の顔を見に来ただけなの


   それなのに…


今日は、不機嫌みたいね


…違うわね…

最近…『今日も』かしら?


駆け寄る私をスルリ…と、かわす貴方


すれ違いざまに、その薄い唇が放つ台詞…氷柱のような凍えた言の葉が、胸を貫き心の中で砕け散る



頬より、転んで剃りむいた膝より…胸が痛いわ


改めて、貴方にとっての自分の存在意義を考えさせられた


…好きでもない女に、まとわり付かれるほど迷惑…な話しはないわよね


解ってるわよ、それくらい


そんなやりとりは私達にとっては、いつもの事


同じ事の繰り返し


貴方との心の距離は、いつまで経っても平行線


そう、変わり映えのしない日常 ありふれた…日常



  だけど、…だけど



いつも前向きで、元気な私だって…ちょっとへこんでる日もあるのよ


例えば…【仕事】で、ヘマしちゃったりとか

…例えば、とても重要な任務で、失敗しちゃったりとか

…た、例えば…取り返しのつかない位に…大事なミッションで、やらかしちゃったり…と…か…



星も見えない、明日も見えない…こんな寂しい不安な夜は、ほんの一握りでいいから、心に温もりが欲しいのよ



…嘘でも良いから、優しい言葉をかけて欲しいの



貴方の容赦ない酷い仕打


何も言えず、何も出来ずに…ただ立ち尽くしてた


これも、二人の仕様なの?


恋愛の神様、たまには私に…ご褒美くれても、いいじゃない?
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