イベント集

□さっちゃん誕生日記念
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喩えるならば…そうだな
野に咲く白い花のような


草原を渡る微かな風にも、シャラシャラ揺れるような


そんな儚いイメージの…



武州(いなか)に残してきた一輪の白い花…



今ごろ何処かで誰かと幸せに暮らしているだろうか



…そうさ 幸せならば、それでいい



アイツが幸せならば、それでいいんだ





******





「…ふーん よく見ると綺麗なんだな 今まで気が付かなかった」



俺は、息苦しいほどの沈黙を破りたくて…、感じた事をそのまま口に出した



すると、思っていたより…隣に掛けている女が反応した



「何?薮から棒に それでも口説いてるつもり?」



……オイ 割りと自意識過剰なんだなっ チゲーッよ 花だよ、花!


俺らの目の前に咲いてる花が、綺麗だっつってんだよっ!


などと心の中で突っ込んでみたが、あえて言葉にはしない


始末屋といえども一応、コイツも女だ


全ての女に優しくしなくては、男が廃る



「あやめだよ、あやめ!あやめが綺麗だなっつってんだよ」


「やだ!気安く人の名前を呼び捨てにしないで!」


いきなり怒りだした始末屋に、俺は再び驚いた


…あ コイツの名前も、―あやめ―だっけ 紛らわしいな、なんか



一旦、落ち着こうと…とりあえず一服


ふーっと紫煙を吐きだし、煙草を持っている手で女と同じ名前の花を指した


「花ね、花 あやめの花が綺麗だなーって言ったの、俺は」


「 ……あ …そう、ね…もうそんな季節なのね… やだ 私ったら 早合点しちゃったわ」


そう言うと始末屋は、また黙りこくった


うつ向き加減だった目線は、先程よりは上になり その視線の先には艶やかな紫色の花の群れ


そして、独りごとともつかない位にとても小さく…なにかを呟いた 



憂いだ横顔が思った以上に美しかったので…思わず俺は見入ってしまった



…黙ってりゃ、綺麗なんだよ コイツはさ



今度は、目を閉じてふーっと溜め息をついた始末屋



…あれ?なんかコイツ… 気を悪くさせてしまったのか?



俺のせいでか…と思い慌てて、すかさずフォローしようとした


「あ、あれ?今日は珍しく着物なんだな 新作か?い、良い色だな うん 」



…とりあえず、着てる物を誉めてみれば良いだろう



端正な横顔は、チラと視線だけ俺の方へ動かして答えた


「ああ、これ…三年前だったら新作ね」



っ痛っつあ!…痛タタタ…墓穴掘っちまったっ


どーしたら良いんだ、こんな時は!


フォロ方の異名を取る、この俺がっ


だ、誰か助けてくれ!


も、もし近藤さんだったら…ああっ駄目だ、駄目だ!多分、俺より気の利いた台詞なんて吐けやしない


そ、総悟は…まだ子供だ!…しかも、どSだ


や、山崎っ!…問題外…だ、な…


あ、野郎だったら…普段は気くわないくせに、何故かあの銀髪野郎の顔が浮かんだ


あの野郎だったら…こんな時、何て切りかわすだろう

ダラダラと嫌な汗ばかり滲みでる
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