イベント集
□さっちゃん誕生日記念
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喩えるならば…そうだな
野に咲く白い花のような
草原を渡る微かな風にも、シャラシャラ揺れるような
そんな儚いイメージの…
武州(いなか)に残してきた一輪の白い花…
今ごろ何処かで誰かと幸せに暮らしているだろうか
…そうさ 幸せならば、それでいい
アイツが幸せならば、それでいいんだ
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「…ふーん よく見ると綺麗なんだな 今まで気が付かなかった」
俺は、息苦しいほどの沈黙を破りたくて…、感じた事をそのまま口に出した
すると、思っていたより…隣に掛けている女が反応した
「何?薮から棒に それでも口説いてるつもり?」
……オイ 割りと自意識過剰なんだなっ チゲーッよ 花だよ、花!
俺らの目の前に咲いてる花が、綺麗だっつってんだよっ!
などと心の中で突っ込んでみたが、あえて言葉にはしない
始末屋といえども一応、コイツも女だ
全ての女に優しくしなくては、男が廃る
「あやめだよ、あやめ!あやめが綺麗だなっつってんだよ」
「やだ!気安く人の名前を呼び捨てにしないで!」
いきなり怒りだした始末屋に、俺は再び驚いた
…あ コイツの名前も、―あやめ―だっけ 紛らわしいな、なんか
一旦、落ち着こうと…とりあえず一服
ふーっと紫煙を吐きだし、煙草を持っている手で女と同じ名前の花を指した
「花ね、花 あやめの花が綺麗だなーって言ったの、俺は」
「 ……あ …そう、ね…もうそんな季節なのね… やだ 私ったら 早合点しちゃったわ」
そう言うと始末屋は、また黙りこくった
うつ向き加減だった目線は、先程よりは上になり その視線の先には艶やかな紫色の花の群れ
そして、独りごとともつかない位にとても小さく…なにかを呟いた
憂いだ横顔が思った以上に美しかったので…思わず俺は見入ってしまった
…黙ってりゃ、綺麗なんだよ コイツはさ
今度は、目を閉じてふーっと溜め息をついた始末屋
…あれ?なんかコイツ… 気を悪くさせてしまったのか?
俺のせいでか…と思い慌てて、すかさずフォローしようとした
「あ、あれ?今日は珍しく着物なんだな 新作か?い、良い色だな うん 」
…とりあえず、着てる物を誉めてみれば良いだろう
端正な横顔は、チラと視線だけ俺の方へ動かして答えた
「ああ、これ…三年前だったら新作ね」
っ痛っつあ!…痛タタタ…墓穴掘っちまったっ
どーしたら良いんだ、こんな時は!
フォロ方の異名を取る、この俺がっ
だ、誰か助けてくれ!
も、もし近藤さんだったら…ああっ駄目だ、駄目だ!多分、俺より気の利いた台詞なんて吐けやしない
そ、総悟は…まだ子供だ!…しかも、どSだ
や、山崎っ!…問題外…だ、な…
あ、野郎だったら…普段は気くわないくせに、何故かあの銀髪野郎の顔が浮かんだ
あの野郎だったら…こんな時、何て切りかわすだろう
ダラダラと嫌な汗ばかり滲みでる