++Ark++

□嘘か真か。
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「怖い話でもしましょうか」


大きな鴉と鴉に魅入られた少女の話。
八戒のその一言で始まった階段話は相当怖くて話が終わる頃に私はすでに涙目になっていた。


「くす…怖がらせちゃいましたかね」


優しい手付きで瞳に溜まった涙を拭う八戒に私はふるふると首を振った。


「暑いっていうから…少しでも涼しくしてあげたかったんですよ」


身体を冷やすには充分すぎる。
むしろ悪寒が走って寒いくらいだった。
身体を両腕で抱き締め寒さを緩和させた。


「…あ、寒くなっちゃいました?」


からかう様な八戒の問い掛けに普段なら不満の声の一つでもあげるのだが今は反論する気さえ起きない。


「じゃ…もう寝ましょうか」


私をベッドまで運んで布団をかけると暖かくて少し安心した。
疲れからか自然と瞼が引っ付く。
その様子をみて八戒が優しく微笑んだのが伝わった。


「クス…おやすみなさい」







悪寒がして目が覚めた。
ベッドから身を起こすもまだ辺りは暗くて夜中だと解る。
怖い話を聞いた後で変な時間に目が覚めるなんて最悪だ…と、再びベッドへと寝転んだ。
夢へ逃げようと必死で目をつぶる。
刹那、ふわりと優しい体温が身を包んだ。


「!」

驚いて目を開ければ暗くてよく見えなかったが誰かが私を抱き締めている。
きっと八戒だろう。
怖がらせたから心配してくれたんだ…
八戒が側にいると解れば安心してまた襲いかかる眠気に私は身を任せた。








「朝ですよ、起きて下さい」


朝、目を開ければすでに身支度を整えた八戒が写った。
寝たそうに瞳を擦りながら起き上がれば八戒はクスリと笑った。


「よく寝てましたね」

そんなに寝ていただろうか?
不思議に思いつつ立ち上がればカーテンを開けている八戒に昨日の礼を言った。


「昨日?…そんなに怖い話気に入りましたか?」


怪訝な表情で聞いて来る八戒に私は昨日の旨を説明する。
しかし八戒は身に覚えが無い様で再び首を傾げた。


「……そもそも、僕起きたら自室でしたけど?」


目眩がした。


じゃあ、
じゃあ昨日、
私を
抱き締めていたのは―




ダ レ ?





「…そう言えば、よく言いますよね。怖い話をすると集まるって」


その八戒の言葉に私は恐怖から意識を失った。







全部嘘なのに。
(…あれ。……少し怖がらせ過ぎちゃいましたかねえ…嘘だったんですけど)







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