blue bird
□冷たい夜
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ただ君の瞳が、寂しそうで。
寂しいと死んじゃう、
うさぎみたいだったから。
「烏哭さー」
夜に溶け込む漆黒の髪。瞳も眼鏡も漆黒で烏哭は目を細めた。
自分も闇に溶け込めるが、彼女程闇に溶けれる人は初めて見た。
闇に、溶け込んでるのに彼女はしっかりと存在を主張していたけど。
「なに?」
「呼んだらいっつもいるよな、暇なの?」
至極迷惑そうに髪を弄りながら彼女は言った。
野宿したり、寝れなかったり理由は様々だけど彼女は僕を呼ぶ。
呼んでも現れなかったら可哀相じゃない、(そんな事思うなんて気持ち悪いけど)
指摘してやろうかと思ったけど、彼女の瞳がいつにも増して寂しそうだったから。
僕は煙草に火をつけて、暇なのよ。と答えた。
「そもそもお前何者だよ」
「企業秘密♪」
「刺客?」
「さぁ、どうでしょう?」
「お前なぁ…」
「そんなに僕の事気になるの?」
クスクスと笑えば彼女は押し黙った。
微かに頬が赤いのを見逃さない。
煙草を咥えたまま、両手で彼女の頬に触れる。
「…っ」
「冷たいでしょ」
「な、なにがしたいんだよっ」
「うさぎちゃんを慰めようかと思って、ねぇ」
そのまま片頬に触れたまま、開いた手で頭を撫でる。
すぐに、大人しくなった(照れてる?)
僕は度々彼女をうさぎと呼ぶ。理由を聞かれた時寂しそうだったから、(うさぎは寂しいと死ぬんだよ)って教えてあげてからは自分が寂しそうな時に呼ばれるのを理解しているようだ。
「なんかあった?」
「…別に」
「そう」
予想は外れてはいない筈だ。
彼女の声が震えてる。
でもまぁ、聞かれたくないなら聞かないでおこう。
「烏哭、」
「ん?」
「肩…貸して」
「……朝起きたら1人かもよ」
「別にいい」
「猪八戒くんに怒られるかも」
「…べつに、いい…っ」
猪八戒の名前を出した途端肩が震える(理由は彼?)
まぁ、貸してやらない事もないとすこしからかい口調で彼女に言えばありがと、と短く呟き肩に頭をよせた。
すぐに聞こえる小さな寝息。
迷惑そうにしてても求めてるんでしょ、闇を。
光が近くにいて苦しいんでしょ。
なんで、こっちに来ないの。
なんて子供染みた事を考える僕に苦笑しながら彼女の柔らかな黒髪に指を絡めた。
(本当無防備…いつか襲うよ?)
彼女が素直なのは夜だけ。
闇に、飲み込まれた時。
(彼女は完全に飲み込まれてはくれないけれど)
いつか、その時が来るまで…。
(彼は気付かない)
(飲み込まれてるのは自分だと)