blue bird

□金糸と漆黒
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退屈だった。
退屈すぎて眠たくなる。平和すぎる時間に目を細め私は新聞を読みながら舟を漕いでる三蔵に声を掛けた。


「なー、三蔵」


「……」


「なーってば」


「……」


「んだよ、本当に寝てんのか?つまらね」


「……」


「……」


また、沈黙。
三蔵はどうやら本気で寝入っているらしく起こすと逆に迷惑なのでそっとしておく事にした。


「……さんぞ、」


それでもやっぱり暇なのは否めなくて寝ている三蔵に近付いた。
寝顔の三蔵はいつもより幼い顔でどこか笑えた。
さらさらと窓から流れる風に揺られる金糸の髪を思わず掴む。


「さらさら……」


手触りがよくて思わず顔を綻ばせる。
あまり触ると起きそうだと手を離そうとした瞬間、自分の長い髪が引っ張られた。


「え、」


「…何してやがる」


「さんぞ、寝てなかったの?」


「お前が煩くて寝れん。」


「てことは寝れないふりしてたんだ…やらしいなぁ、もう」


「今すぐ黙れ」


ジャキっと銃を構える三蔵に慌てて両手をあげた。


「三蔵の髪って綺麗だよな」


「…お前のが…」


「え?なに、聞こえない」


「……なんでもねぇよ」


三蔵の呟きが聞き取れなくて耳を傾けたのに三蔵はふい、とそっぽ向き答えてくれなかった。


「ところで早く髪から手を離して、痛いんだけど」


「…断る」


「なにゆえ!?」




金糸と漆黒
(お前の髪の方が綺麗だ)
(そんな事言える訳ないだろ)








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