?*忍
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「………ウス…」
樺地が困った顔をして宍戸を見る。
どうしましょう、と問い掛けているようだ。
宍戸は深く溜め息を吐きながら頭を振った。
「ほっとけ、樺地…」
「……ですが……」
樺地は心配そうに跡部たちが出て行ったドアを見つめるが、宍戸はやはり“放っておけ”と、騒ぎのせいで食べられずにいた弁当の残りをつつき始める。
「…跡部が心配か?」
「……いえ、……それよりも、忍足さんが……」
「まぁ、そうか…」
あの3人の様子では何をしでかすか分ったものではない。
しかし宍戸はニヤッと笑って言い切った。
「大丈夫だよ、忍足には長太郎がいるから」
「…………」
その言葉に樺地は固かった表情を緩め「ウス」と答えると、宍戸同様食べ損ねていた弁当を食べ始める。
「…あ、いちおう長太郎にメールしとくか」
「ウス」
* * *
跡部、慈郎、岳人の3人が向かったのは、特別教室棟。
忍足と鳳は、いつもそこの空き教室で昼休みを過ごしていた。
そこは元音楽室で、今はもっと設備の良い部屋があるため使われていない。
「あの2人も、付き合う前までは俺らと一緒に食べてたのにね」
「そうなんだよなー」
「鳳のヤロウ……!!」
さらに鳳への嫉妬と怒りを深めながら、辿り着いた3人は旧音楽室の重厚な扉を勢いよく開けた。
バンッと扉を開けた3人は、ダーッと走っていきなり鳳に襲いかかる奇襲作戦に出るはずだったのだが、扉を開けたまま立ち止まってしまった。
なぜならそこに鳳の姿はなく、椅子も机もなくポツンとピアノだけがあるその部屋には忍足が一人で本を読んでいたからだ。
いきなり入ってきた三人に驚いた忍足は目を見開いて三人を見つめる。
「な……なんやいきなり、どないしてん?」
「侑ちゃん、チョタは?」
「なに言うてん、二年はミーティングやろ?なぁ跡部」
「あ……俺様としたことが忘れてたぜ…」
「ははっ、しっかりしてや〜」
しゃあないなぁ、と笑う忍足に跡部は柄にもなく照れて頭を掻いた。
「とりあえずこっち座ったら?」
忍足はポンポンと絨毯の床を叩き、三人は誘われるまま忍足のそばに座った。
忍足は再び本を読み始め、三人はそんな忍足を見つめながら押し黙る。
予想外の展開にどうすればいいか分からなかった。
しかし、意気込んで来てしまった三人はこのまま帰る気にもなれず…。
忍足が本を捲る音だけが響く沈黙の中、突然切り出したのは慈郎だった。
「なーなー侑ちゃん」
「…ん?」
慈郎の声に忍足は本から視線を上げる。
そして、僅かに悲しそうな顔をしながら真っ直ぐ見つめてくる慈郎に、少し体を緊張させた。
「な、なんや…?」
「俺ね、…あと岳人と跡部も」
「うん?」
「侑ちゃんが、好きなの」
「…うん…?」
忍足は三人を見回す。
岳人は慈郎が考えていることを理解ししょんぼりとした態度を見せ、跡部は「いきなり何だ?」という顔で慈郎を見ていた。
「俺も好きやで?ジローも岳人も跡部も――」
「ちがうの!」
慈郎の強い声に忍足の肩がビクリと跳ねる。
慈郎はわざと泣きそうな顔をして俯いた。
「俺たちは、侑ちゃんがチョタを好きなように、侑ちゃんのことが好きなんだよ」
「えっ……」
「でも、侑ちゃんはチョタのものになっちゃて……俺たち寂しい……」
「……ジロー…」
すっかり肩を落とした慈郎に忍足は見ていられなくなり、その肩にそっと手を置いた。
すると、その手首を慈郎の手にガッシリと掴まれてしまう。
「っ…ジロ…?」
「だからさ、侑ちゃん…」
「わっ…!」
慈郎は掴んだ手首を自分の方に引っ張り、倒れ込んできた忍足の体を絨毯の上に仰向けに寝かせて腹の上に跨がった。
続いて岳人も忍足の太股に跨がる。
「なっ……に……?」
「一回だけでいいから、ヤらせて?」
そう言った慈郎の顔は、今までの悲しい表情が嘘のようにニッコリと笑っていた。
忍足は混乱し、唖然としたまま固まってしまった。
忍足のそんな様子にも構わず、慈郎はニコニコと楽しそうに笑顔を浮かべたまま、忍足のブレザーの前を開けシャツの釦も外し始める。
岳人は慈郎の肩に顎を乗せてその様子を眺めた。
「っお……オイッ、やめろよ…!」
傍らで、今までの成り行きを呆然と眺めているだけだった跡部が初めて口を出す。