?*忍

□忍足クンのハジメの災難
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しかし、焦ってはいけない。
跡部はスラックスのポケットの中に忍ばせたソレを布越しに握り締める。

焦ってことに及ぼうとすれば怪しまれるのは間違いない。


……だが使うなら今だろう。
一度達したその余韻でボーッとしている今がチャンスだ。

跡部は忍足の膝裏に手を入れてグイと持ち上げた。

「あっ…」

大きく足を広げられた忍足は、恥ずかしいのだろう、フッと顔を横に逸らす。
跡部は左手を膝裏から腿の付根まで滑らせて、尻を撫で、まだ閉じている孔に辿り着いた。
中指で軽く押すように撫でると、ヒクン、ヒクンと引きつる。
自分でもその動きが分かるのだろう、忍足は耳まで真っ赤だ。

「へぇ、早く欲しいってよ…」

「っ…そ、そんなんちゃうし…!」

忍足は真っ赤な顔を自分の腕で覆い隠す。
これは好都合と、跡部はポケットから素早くアレを取り出して、蓋を開けた。

「嘘吐きだな…侑士は」

蓋を開けて逆様にされたローションのチューブは、トロトロとその中身を忍足の孔目掛けて零す。

「っ…ひ、ぁ……冷た…?」

ひんやりとしたその感触に、忍足は何事かと顔を上げた。

「な、なにそれ…?」

「見て分かるだろ、ローションだ」

「…ローション…やな…」

確かにローションだ。と忍足は思う。
しかし、まだ抱かれて間もない頃はよくお世話になっていたソレだが、最近では全く見ていなかったのに、なぜ今更ソレを…という疑問が浮かんだ。
しかし今日は最初から優しかったし、機嫌でも良い故の単なる気紛れだろうと、忍足はそれ以上考えることをやめた。
その間にも跡部の指はローションに濡れた孔を撫でている。

「っ…ずいぶん、丁寧やんか…」

「焦れったい?」

「……べつに……」

小さくそれだけ呟いた忍足は、明らかに“いつまで入口を撫でているんだよ”という顔だ。
しかしまだ薬の効果は出ていないらしく余裕はある表情で、跡部は効果が表れるまでこれ以上の行為に及ぶつもりはなかった。


そして、跡部の期待通り、媚薬入りローションはその効果をすぐに発揮してくれたのだった。





「…ぅ…っ……あ…?……なにぃ……?」

間も無く忍足の体は変化を見せ、頬が紅潮し、異常に呼吸を乱した。
孔は誘うかのように頻繁に弛緩収縮を繰り返すのだが、忍足はそこを撫でる跡部の指から逃げようと腰を捩る。

「ンだよ……逃げるな」

「やっ……て…、おれ…おかしいっ…!」

「…おかしい…?なにがだよ」

「…ぁ…熱ぃ…」

忍足はまだローションのせいだとは気付いていないらしく、勝手に熱くなっていく体に混乱しているようだ。
情けなく眉を下げ、潤んだ瞳が不安げに俺を見つめた。
そして、不愉快そうに顔を歪める。

「……なっ……なにニヤニヤしてん…!人が苦しがってるっちゅうのにっ」

「あ?……ああ、悪い」

跡部は忍足に指摘されてやっと気付いた。
即効性とは知っていたがこんなにもすぐに効果を表してくれたことに、無意識に口許が緩んでいたらしい。
しかしもう、跡部はその表情を直そうとはしなかった。

「どの程度かと思ったが、けっこうな効き目みたいだな…?」

「……は…?」

にやついた笑みを浮かべながら跡部が呟いた言葉を、忍足は理解できない。

「……なん……どういう…意味…」

「…熱いんだろ?とくにここが…」

「―――ッッ?!」

跡部の指がくい、と入口を押し上げると、忍足の体が大袈裟なほどに跳ね、目を見開く。
声を出そうと口を開いたものの、あまりの衝撃に声にならなかった。
押し上げられた途端、脳天まで一気に駆け巡った強すぎるほどの快楽。
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