?*忍

□06'タロ誕
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「遅いな…」

榊は音楽準備室で仕事をしながら、来るであろう二人を待っていた。
もう来ていてもいいはずだが、なかなか来ない。
昨日の忍足とのメールでは今は忙しいと書いてあったし、やはり来られなくなったのだろうかと考え
ていると、机に置いていた携帯から電子音が響いた。メールの着信だ。

2006/03/14(火) 17:32
from:跡部
[件名]芥川でーす
―――――――――
監督ゴメーン!プレゼントが逃げちゃった…
だから俺1人で行きます、ごめんね!
跡部の試合みてから行くから〜


本文の下には、跡部が試合をする姿の写真が添付されていた。
どうして忍足が逃げ出したのかが気になる所だが、取りあえず「分かった」と返信をしようとしたと
ころに、またメールが入る。
それは知らないアドレスからで、開いてみると「いちいちケータイ借りるのメンドクサイから、俺の
にも監督のアドレス登録していい?」という芥川からのメールだった。
承諾する前に、すでに登録してしまっているではないかと榊は苦笑する。
その初めて見るアドレスに返信しようとボタンを押すと、今度はこの部屋のドアをノックする音に邪
魔をされた。

「入りなさい」

携帯を閉めてスーツのポケットにしまい、声を掛ける。
ゆっくりとドアが開き、そこに立っていた人物を見て、榊は驚いた。

「忍足……」

「…どーも…」

忍足は素っ気なくそれだけ言うと、気まずそうに目を合わせようとせず、静かにドアを閉めた。
榊は立ち上がり、その場に立ち止まったままの忍足へと近付く。目の前に立つと、忍足はチラッと榊
を見上げる。

「…いきなり来たら迷惑やろなー…て、思たんやけど…」

「大丈夫だ」

そう言って榊が頭を撫でると、忍足は安心したらしく、気恥ずかしそうな笑みを浮かべた。

「急に試合がなくなって……暇になったから来てみてん」

「そうか」

「ん。…先生、誕生日おめでとう」

「ああ…」

ありがとう、と耳元で囁きながら抱き寄せると、忍足は大人しく腕の中に収まった。そしておずおず
と榊の背に腕を回す。
久しぶり榊の腕の中はとても心地好く、忍足はぎゅっと抱き付くと目を閉じた。
その様子に榊は微笑みつつ、忍足の髪にキスをしながらポケットからそっと携帯を取り出した。






2006/03/14(火) 17:54
from:太郎ちゃん
[件名]
―――――――――
プレゼントなら届いたぞ。
あと、アドレスは登録してもらって構わない。ただ、悪戯は無視させてもらう。



「なーんだ……忍足、行ったんだ」

榊からのメールを見て、素直じゃない友人に苦笑する。
これならもう、自分は行かない方がいいだろう。邪魔になるだけだ。
ほっと息を吐き携帯の画面に目を戻すと、榊のメールにはまだ続きがあるらしいことに気がついた。
画面をスクロールすると、一度真っ白になった画面に再び文字が浮かぶ。



高校での忍足の様子なら、毎日送ってくれて構わない。頼んだぞ。



「あのオッサン…」

慈郎は乱暴に携帯のボタンを叩いた。


―――――――





忍足を膝に乗せて唇を合わせていると、机の上の携帯が鳴り出した。
深く合わせていた唇を名残惜しくも離すと、瞳を潤ませた忍足が後ろを振り向いて携帯を取る。

「はい…」

「すまない」

忍足は首を横に振って榊の首に抱き付き、榊は忍足を抱いたまま届いたばかりのメールを確認した。
そこにはたった一言だけがドンと書いてあり、榊は思わず笑ってしまった。
その様子を不思議に思い、忍足は榊に尋ねる。

「…誰から?」

「ああ…、芥川からだ」

「ジロー?」

さっきまで一緒にいた友人の名前が出てきて忍足は体を起こし、榊が差し出す携帯を覗き込む。
そして、わざわざ画面の中央に短い一文が表示されるように仕組まれたそのメールを見て、忍足もま
た吹き出した。

「な、なんやコレ…っ、今の状況でシャレにならんわ…!」





2006/03/14(火) 18:03
from:芥川
[件名]
―――――――――




この変態教師が!!!








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