?*忍
□世界一強い恋人
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荒々しい触り方だとか、噛み付くようなキスだとか。
けれどその中にも優しさが潜んでいて、確かに俺は愛されていると感じて、ひどく気持ちが良くて。
嫌いな煙草の匂いさえも甘く感じてしまうのは、末期だと、自分で思う。
早々に摺り下ろされたスラックスと下着。剥き出しの下半身は大きく開かされ、片足を背凭れへと預けられた。その中心を力任せに扱かれて、ネクタイもボタンも外され露にされた胸を亜久津の唇が這う。
「やぁ、あっ…亜久津…!」
「あ?」
「もっと…優しゅう…っ」
「ふざけんな…このくらいが好きなんだろうが」
「あぁあ…ッッ」
ぐりぐりと抉られる先端の窪みと、噛まれる乳首に気が狂いそうになる。
いや、すでに狂っている。
少しの痛みを伴うそれがどうしようもなく気持ち良くて、亜久津の言う通り、俺はこのくらいされた方が好きなのだ。…亜久津限定だが。
「あぁ……はぁッ…、ぁ…イク…ッッ」
「ああ…、イケよ」
「ア、アぁ―――!!」
亜久津の手が素早くスライドし、ヒクヒクと痙攣する忍足の脚間で精液が宙に飛ぶ。それはパタパタと忍足の下腹に散った。
「…えっろ…」
亜久津は忍足の顔を見下ろして呟く。
うっとりと細められた潤んだ瞳だとか、紅潮した頬。忙しなく空気を吸いこむ唇に突っ込んで、その綺麗でいやらしい顔にぶっかけてやりたい衝動に駆られる。……そんなこと、忍足には一度だってしたことがない。そんな衝動よりも、大事にしたい思いが勝るのだ、亜久津らしくもなく。
「…あくつ…」
「…なんだ」
「キス……したい」
「…ん」
亜久津が顔を寄せ、忍足の腕が首に回る。ちゅ、と軽く触れ、一度離し、今度は深く唇を合わせる。
歯列、上顎を丹念に愛撫する舌、流し込まれる亜久津の唾液は酷く甘いと、忍足は感じた。苦い煙草味の亜久津とのキスは、いつだって甘い。
キスだけでなく、この行為だって。少し乱暴に扱われたって甘いと感じる。
俺は、もっと亜久津の好きにしてくれれば良いとすら思っている。
「ン……――ッあ!」
長い口付けから開放され、途端、声が溢れた。
すっかり亜久津を受け入れるためのものになってしまったそこに、指が入っている。動くたびにクチュ、と音を立てるのは、性器から先走りやら精液やらが垂れ落ちて濡れていたせいだろう。
「あ…、あぁ…っ」
「足りねェだろ」
「ン…っ」
こくこくと素直に頷けば、亜久津は口角を吊り上げて指を増やした。三本の指で素早くピストンされる。
「やっ、あっ、あっ…はぁ…ッ」
「堪んねェ……もっと鳴けよ、忍足」
「んんっ……あく…ッ」
それなら亜久津のが欲しい。
そう思っていると、物欲しそうな顔をしていたのだろうか、それとも亜久津も限界だったのだろうか、亜久津は片手で器用にベルトを外し、ファスナーを下ろした。
「物欲しそうな顔しやがって…ッ」
ああ、やっぱりそんな顔をしてたのか。
後ろから三本の指が引き抜かれ、亜久津は下着の中から自身を取り出す。それは完全に勃起して、先端を濡らしていた。
忍足の予想はどちらも当たっていたらしい。
「あくつ…、早ぅ…っ」
「チッ…」
亜久津は忍足の腰を掴み先端を入り口に押し当てた。そして一気に腰を進める。
「アッ、はァー…ッッ!」
ぐぐ、と休むことなく一気に入ってくる亜久津に喉を反らせ、声にならない声を上げて。