?*忍

□06'タロ誕
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2006/03/14(火) 08:11
from:忍足
[件名]芥川です
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忍足だと思った?ざんねーん芥川でした。
たんじょーびおめでとー!放課後すっげープレゼント持ってくから音楽室で待っててね☆
あ、ぜったい返信しないで!




もうすぐ職員会議が始まるという時に、忍足の携帯から、なぜか芥川からのメールが届いた。
こんな時間に届くということは、あの芥川がちゃんと朝練に出ているのだろう。そして、最後の一文
を見る限り、無断で忍足の携帯を借りているのだろう。


「榊先生、なんだか嬉しそうですね」

隣りの席の女性教諭がにこりと微笑んでこちらを見ていた。

「ええ……今日は、私の誕生日でして」

「あらっ、おめでとうございます」

榊は笑みを返し、手にしていた携帯に視線を戻す。
なかなか見られない榊の笑みを向けられて、頬を染めて固まる女性教諭には気付かない。
優しいままの視線は、携帯の画面の“忍足”という文字を見つめていた。

「去年の卒業生が、来てくれるんですよ……」








「嫌や、行かへん」

コートを一望できるように囲む観戦席に立つジャージ姿の忍足は、制服姿の慈郎を背中に背負ってい
た。
…というより、慈郎が猿のようにしがみついていた。

「なんでー、行こうよー!」

「いや、無理やから」

「…おいジロー、お前も着替えてこいよ」

隣りに座っていた跡部が、そんな二人を呆れ顔で見上げて言う。
慈郎はムッと頬を膨らませて跡部を見下ろした。

「やだC〜、太郎のところ行くんだC〜」

「せやから行かれへんて……」

「無理だ、諦めろ」

「なんで跡部まで!」

「ちゅうか降りて…ジロー重い…」

「むぅ…」

慈郎はますます膨れながら、忍足の背中から飛び下りた。
しゃがみこむと体育座りをし、膝に顎を乗せて如何にも拗ねてますという態度。

「なんでダメなんだよ…」

その様子に忍足は溜め息を吐きながら、慈郎の隣りに腰を下ろす。跡部と忍足が慈郎を挟む形だ。

「なんでってなぁ…、今日からランキング戦やんか」

そう、今日から、新学期に向けてのレギュラーを決める校内ランキング戦が始まるのだ。
現在準レギュラーの忍足は(ちなみに慈郎も準、跡部はすでにレギュラーだ)ここでレギュラー入りを
狙っていた。そんな大事なときに部活を休むわけには行かないと、忍足がそう言うと、慈郎は何故か
キョトンとしていた。

「……ジロー?」

「今日からランキング戦?」

「………」

忍足の言葉を繰り返す慈郎に、跡部と忍足の二人は顔を見合わせた。

「おいジロー…、まさか、お前……」

「…知らなかったん…?」

恐る恐る尋ねてみると、慈郎は大きくうなずいた。

「知らなかった!そっかランキング戦か〜、うっわ楽しみだな!」

途端に元気になった慈郎に、二人は頭を抱えた。まさか知らなかったとは…、そのいい加減な処は中
学の頃から全く成長が見られない。

「で?オレの試合いつ?」

目を爛々と輝かせながら聞いてくる慈郎にげんなりとしながらも、跡部は試合の組み合わせを思い出
す。

「あー……たしか、今日は無ぇな」

「……は?」

「今日はお前の試合は無い」

「……っんだよマジつまんねぇC…」

慈郎の目が一気に半目になった。
高等部でも大所帯の氷帝テニス部だ、試合は何回にも分けて行われ、自分の試合がない日も出てきて
しまう。

「忍足ぃ、やっぱり監督のところ行こー」

「俺の試合は無視かい!」

忍足の素早いツッコミが飛ぶが、慈郎はその手をスッと躱した。忍足の口から小さな舌打ちが聞こえ
る。


「あーあ…せっかく監督の誕生日なのに、忍足ひで〜」

「っ…う、うっさいな…」

慈郎の言い方は“恋人なのに”というニュアンスが含まれていて、恥ずかしくなってしまう。
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