?*忍
□王子様の休憩所
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テニス部部長。
そして、
生徒会会長。
跡部は二つの顔を持っている。
つまり、大きな仕事を二つも抱えているのだ。
『王子様の休憩所』
今日は部活が早く上がったから、跡部の家にでもお邪魔しようかと思っていたのだが。
「ワリィ、生徒会の仕事があってな」
断られた。
それならしょうがない、一人で帰ろう。
そう思うも、なんだかそんな気分にもなれず。
いつの間にか生徒会室のでかいソファに座っていた。
一人静かにちょこんと座る忍足を余所に、跡部は会長席に座ってさっきから書類と格闘している。
カリカリとペンが走る音と、ときどき判子を押す音が部屋に響いた。
…もしかしたら、邪魔かもしれない。
けど、静にしていれば大丈夫だろうし、邪魔だと言われたら出て行けばいい。
忍足はただ黙って跡部を見ていた。
(真面目なカオや…)
跡部の生徒会長としての仕事をする姿。
朝礼のときの派手なパフォーマンス付きの挨拶だとか、全校に顔を出す仕事をする姿は何度も見たことがあるが、こういう雑務をこなす姿を見るのは実は初めてだったりする。
まさに優等生、といった跡部の姿に見惚れていた。
もともと整い過ぎな顔が真剣な顔をすると、恐ろしく綺麗だ。ついでに珍しく眼鏡を掛けているのも新鮮でいい。
(かっこええ……、なんて、死んでも言ったらんけど)
「おい、あんまり見つめんじゃねぇ。気が散る」
「!…えっ、あ…………すまん」
ボーッとしていたところに突然声を掛けられて、ビクリと体が跳ねた。
…それよりも、ジッと見つめていたのに気付かれていたというのが恥ずかしい。
忍足の頬が微かに染まる。
「ご、ごめんな……、気にせんと続けて?」
ペンの音が止まったのに気付き、慌てて忍足は謝った。すると跡部は立ち上がり、忍足に向かって歩いて来た。
「跡部!?…し、仕事せなあかんやろ」
「………いい」
「は?………ええの?」
目の前まで来た跡部はコクンと頷くと眼鏡を外して、後ろのテーブルへとそれを置く。そしてソファに片膝をついて忍足の首に抱き付いた。
「っうわ…?跡部?」
「…疲れた…」
「ッ…ちょ…」
首筋をちゅっと吸われて、忍足は小さく震えた。
そのまま跡部は体重をかけて、二人でソファに寝転ぶ形になる。跡部の腕が今度は腰を抱き、伸ばせない足は自然と絡み合う。
「忍足……」
「…ホンマどないしてん?」
「だから、疲れたんだよ…」
「わっ…!」
今度はちゅっと鼻にキスをされて、思わず目を閉じた。
「はは、何いちいち驚いてんだ?」
「ッ、いきなりするからやろ…!」
「ふーん……かわいいな、知ってたけど」
「なッ………アホちゃう自分……」
「カオ真っ赤だぜ?……かわいい」
ひょいと眼鏡を奪われて、
「ンっ!」
ついに唇を奪われる。