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□last resort
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夕暮れの公園が俺と彼とのデートコースだった。
普通の恋人みたく、手を繋いだり、互いに笑い合える会話など今も昔も皆無。
でも俺と彼は恋人同士だった。

だが、それも今日で終わり。
「もう会えない」
と、俺は彼に告げた。
「そっか…」
彼はさほど驚きもせず、だが、少しぎこちない仕草で俺に向かって、微笑んだ。
俺はそのぎこちない微笑みに眼を伏せ、
何故こんなことになってしまったのかと、俺は出会った時のことを思い出していた……


□■□■
「ごめん…俺、好きな人が…いるんだ…」
「それでいいからっ!!」
彼は必死になって…告白と言うよりも願いに聞こえて…
俺は『わかった』と返事をせざるをえなくて…彼と付き合うことになった。

付き合うといっても、彼が俺の言う事に従っているだけのような気がする。
どんなムチャなことを言っても彼はムチャを可能にし、そして微笑んでいた…
俺は、大きく、包み込むような彼のぬくもりに甘えていた…‥・ 

甘えていた事に気付き、俺は彼に冷たくあたったりもした。
無理矢理押し倒して、乱暴に体をまさぐっても、彼は『イヤ』と言ったり、もがいて抵抗したりもしなかった。
そして俺自体も…興奮もせず、役立たずで。『スマン』と言って何もしなかったこともあった。


□■□■
「最初からわかっていたから、気にすることない…」
そう言い俯き、また言葉を発した。
「ラッキーだった…あ、場違いなセリフだ…」
そう言い、俺の前ではしゃいでみせる彼…ずっと思っていたんだ。
一途で

かわいくて…

好きになれればいいのに……


だけど、気持ちは素直じゃなくて…心の中に消し去れない物がひとつあって……


「じゃ、ここでいいから…」
いつもの彼との別れ道だった。
これからは会う事もなくなるのだろう…

「……ゴメン」

その言葉、一つしかでてこなかった。


……いや、言えなかったーー



そんな俺に彼はいつもの微笑みを見せて…
「貴方だけ悪くはないんだ…」
俺を許すかのように言った。

俺はその言葉が嬉しくて、ここまでついた決心がにぶっていしまいそうだった。



ーー今なら、間に合う気がする…‥


そう、俺の心が囁いた。
今まであんなにツライ思いをさせてきて…まだ俺は彼にツライ思いをさせる気なのか…
俺だけ楽になってはいけない…
だから俺達は、別々の道を歩んだ方がいいんだ…



最初はひとりだったのだから……

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