学園物小説
□動いた気持ち(颯馬・楓×優斗)
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『…優斗の様子がおかしい。昨日、颯馬と久しぶりに帰れると言って大はしゃぎしていて、今日はノロケが来ると構えていたのに…落ち込んでる…何があったんだろぅ…よく見ると目が腫れてるような…』
「…何だよ、祥秋…」
異様に顔を近づけてジロジロと観察している祥秋に向かって、ようやく口を開いた。
「おはよ、優斗。…何か、おかしいなって思ってさぁ…」
「……」
また無言になった優斗に質問を投げかけてみる。
「颯馬と帰るの、また邪魔されたの?楓に」
「…少し独りにさせて」
苦しそうに笑顔を作り、祥秋に向ける優斗。
「整理できて、話せるようになったら話して…独りで悩むのは反則だからね?」
そう言うと祥秋は優斗から離れた。
「そーまっ!!」
帰ろうと支度をしている颯馬を、ずいぶん長い道のりを走ってきたであろう祥秋が汗をぬぐいながら颯馬を呼び止めた。
「ゆ…ゆーとが、バスケっボールがぁっ」
早く伝えようとして一生懸命言うが、言葉がうまく出てこない祥秋に、楓が待ちきれず詰め寄った。
「何処にいるっ?!!」
「ほ、けん室」
楓に驚きながらも場所を伝えると、楓はカバンを乱暴に掴んだせいでカバンがかかっていた机が倒れた。
だがそれを気にせずそのまま走っていった。
楓をあっけに取られながら見送ると、思いだしたかのように颯馬に詰め寄る。
「颯馬も早く行って…あげてよ!!」
祥秋の行動に苦笑して祥秋の頭を撫でながら言った。
「俺の役目は終わったんですよ。それに今、楓が行きましたし…大丈夫です。」
よく分かっていない祥秋はそれでも颯馬をつれて優斗の元へ連れて行こうとした。
「祥秋…別れたんです、俺たち…わかりますか??」
苦しそうな顔をしてそう伝える颯馬の顔をみて、祥秋は颯馬の服を掴んだまま内容を把握するまでしばらく固まっていた。