拍手ありがとうございます!!

ささやかながらもお礼文をご用意致しました。

現在、鬼灯を連載中です。
只今、3話目。過去の話は『夢』内にあります。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


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地獄の谷が見渡せる一角。
そこで茄子達は各々の休憩時間を過ごしていた。

茄子は谷を見て得たインスピレーションを元に、写生と言う名の抽象画を描き、そんな彼から少し離れた場所で、唐瓜はイヤホンを耳に刺して音楽を聴きながら寝転がり、そして、その唐瓜の腹を枕にするようにして、少女も横になって寝息を立てていた。

彼らの落ち着いた雰囲気から、これが彼らにとって日常の行動だと察する事ができる。

そんな彼らに視察帰りの鬼灯がまたもや声を掛けてきた。

「茄子さん、唐瓜さん、休憩中ですか?」

咎めようとしての声掛けではないと分かる、単純な質問の声音。
それでも上司の声に、茄子と唐瓜は振り返る。

「あ、鬼灯様だー」
「は、はい! 休憩中です!!」

茄子はのんびりとした口調で、唐瓜はビシリッと固まるかのような鋭い返事をする。
相変わらず、真逆の反応である。

「ああ、いいですよ、そのままで」

畏まる唐瓜にそこまで気を張らなくても良いと鬼灯は返す。
彼の腹に少女がいる事に遅れて気付き、身を起こさなくても良いと手で制する。
けれど、唐瓜は生真面目さから、勢い良く身を起こしてしまう。
その反動で、彼の腹から少女が転がり落ちる。
そのまま唐瓜の膝へと落ちたが、少女に目覚める気配はなく、乱れる事のない安らかな寝息が続いた。

「…彼女、起きませんね」
「あ、はい。コイツ、1度寝たらなかなか起きないんで。これくらいじゃ起きませんよ」

だから気にしなくて良いと唐瓜は続ける。

そこまでされても起きないくらい、彼女は深く眠っているのか。
基本的に彼女は一度寝るとちょっとやそっとで起きたりしないようだ。

その辺の地面に転がしても絶対起きないと茄子も笑いながら付け足した。

それを聞いた鬼灯は、顎に手を当て考える仕草をする。

鬼灯も爆睡型ではあるが、流石に転がされたりしたら目を覚ます。
彼女の眠り方は少々常軌を逸しているのではないか。

鬼灯はふむと1つ零してから、唐瓜の前にしゃがみ込む。

「ほ、鬼灯様?」

無言で膝上の少女の寝顔を見つめる…というより睨み付けている鬼灯に、唐瓜は戸惑いを隠せない。
あまりに見つめるものだから、唐瓜も動き難く、つい固まってしまう。

唐瓜が声を掛けても鬼灯は返事をする事なく、少女を睨んだまま。
むしろ、ずいっと距離を縮める。

「あの…何か…?」

別に甘い雰囲気があるわけではないが、居た堪れない唐瓜は現状を打破しようと言葉を続けるが変わらず。
鬼灯は唐瓜の問いに答える事なく、少女の顔へ両手を伸ばす。

「はあっ!?」

唐瓜の驚きの声がその場に響く。

鬼灯の伸びた両手は少女の頬へと届き、そして、その親指が少女の下瞼を引っ張り目元を開いた。
そのあまりに突飛な行動に、唐瓜は思わず声を上げてしまったのだ。

茄子も驚きはしたが、理解が追いつかず、現状把握で手一杯で無言のままである。

そして、当の少女は鬼灯に目元を開かれようが、唐瓜に近くで叫ばれようが、目を覚まさない。
それを良い事に、鬼灯は淡々と少女の瞼裏を見つめ、それに満足した後、今度は少女の腕を掴む。

「………」

最早、何も言えず、身動きすらできない唐瓜と茄子。

そんな2人を置いて、鬼灯は少女の腕を自身の目線上まで持ち上げて見つめ、再び顎に手を当てる。

「…栄養不足による貧血、筋肉もあまりありませんね…それでもああやって金棒を投げられるとは…その反動で深い眠りについているのか…」
「は?」

至極冷静に淡々と医者のように症状を述べる鬼灯。
今の行動は診断だったのか。
唐瓜は拍子抜けして間抜けな声を漏らしてしまった。

「きちんとした食事を摂って身体が作られれば、いずれその眠ってしまう体質も治ると思いますよ」

少女の身体は確かに酷く細い。
それは孤児故に、そして、彼女自身の遠慮のせいで、幼い頃にまともな食事を摂れていなかった事に起因している。
今は働き出し、稼ぎも得るようになったが、1度ついてしまった食事癖はなかなか抜けない。
唐瓜達も注意をしているが、彼女の身体は一向に細いままだった。
つまり、体力がつかないのだ。
なのにその細い身体に見合わない身体能力を発揮するため、このように爆睡してしまう。

だからきちんとした食生活をすれば、見合った体質に改善されると鬼灯は言っているのだ。

「彼女にしっかり食事をするように、と伝えてください」

ひとつアドバイスを残し、鬼灯はやはり淡々と去っていった。

「……えええー…」

間近で寝顔を見られ、瞼を開かれ、腕を掴み上げられ、それでも目を覚まさなかった少女に驚くべきか。
それとも、幼めな外見といえど、仮にも女である少女に対し、遠慮の欠片もない行動を取った鬼灯に引くべきか。

唐瓜はもう何にどうツッコミを入れるべきか分からず、ただただ溜息にも似た声を漏らす事しかできなかった。

「鬼灯様、すげー……」

茄子のその言葉も何に対して凄いと言っているのか。
気になるところだったが、唐瓜のツッコミは追いつかなかった。


続く


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だいぶお待たせしましたが、鬼灯続編です。
まだあまり直接関わってませんが、徐々に…。
いや、ある意味、今回は直接接触してますけれど。

特筆すべき内容もないのであとがき的なものは短めで。


更新がなくても拍手を押して頂き、いつもありがとうございます。
こんなところでも読んでくださっているのだなーと実感が湧きます。
見てくださる方にお応えできるよう、勤しんでいきたいと思います!
今後ともよろしくお願い致します。


2016.05.11 管理人 K.


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