心の扉

□雨
1ページ/2ページ

降り続く雨。
まるでアイツが泣いてるみたいに。


【雨】





サイクスからの報告を受けて呆然とした。


「デミックスが消滅した。」

サイクスは表情一つ変えずにメンバーに言った。
俺だけがこんなに驚いているみたいに。


思い出す。
アイツの言葉。温もり。存在。


「先輩〜!一緒にお風……」


「嫌だ。」


「じゃ、じゃぁ作曲するから聞い………」


「知らない。」


「なんだよ〜先輩のケチ〜」


そう言って不貞腐れるアイツが大好きだった。
大好き…………。
“心がない”俺らにとっては不釣り合いな言葉。

なら、この気持ちはどうすればいい?
止まることを知らない涙はどうすればいい?
満たされることのないこの悲しみはどうすればいい?


心がないから演じているだけ。
俺はそうは思わない。
だってこんなにも苦しくて寂しいのだから。


まだ雨が降っている。


「泣いてるのか?」


そうぽつりと呟く。
約束守れなくてごめん!とでも言ってるのかな。
「俺は先輩のそばにずっといる。消えないよ。」

心配そうにする俺にそう言って抱き締めてくれた。


「約束するよ。必ず帰ってくる。」

約束した。
必ず帰るって。
ずっとそばにいるからって。


“消えない”って。


雨が降っているにもかかわらず俺は外に飛び出した。
空を見上げる。

大粒の雨が降ってくる。
やっぱり泣いてるんだろうな。
アイツは泣き虫だから。

どうしてお前までいなくなっちゃうんだよ。


ずっとそばにいるって約束しただろ。


任務の時だって必ず帰るって言ってたじゃねーかよ。


「“約束”してくれただろ!!どうしていなくなるんだよ!帰ってこいよ!!!!」



空を見上げ泣き叫んだ。
この雨に負けないくらいの大声で。

涙が溢れて頬を伝う。


それに応えるように雨が大降りになった。


体にかかる水が暖かく感じた。
やっぱり泣いてるんだな。
この雨がお前の涙みたいだ。


俺の泣き叫ぶ声と雨の激しい音だけが響いていた。



「先輩、大好きだよ。」


最後にアイツが笑った気がした。












アトガキ→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ