NOVEL

□代理ゆたんぽ
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現在、午前一時を回ったところだ。
布団の中に入って既に三時間ほど、僕は未だに眠れずにいた。
うっすらと細目を開けただけで、ごく間近で寝息を立てている子供のような寝顔が見えてしまう。
時折何が可笑しいのか、小さく吐息だけで笑うこともある。
そんなことをされて、眠れるわけがない。自分の耳たぶに、その笑う息が触れるほど近くに、恋焦がれる人が寝ているのに、どうして心安らかに眠れようか。
今思えば、今日受けた言葉に何故疑問を覚えなかったのか。
寝る支度を全て済ませてから寝巻きに着替え、いざ眠ろうとした時、ロイドさんからそのままの姿でいいからある人の部屋に来るように、と伝言を受けた。
首をかしげながらその人物が居る部屋の戸の前まで足を運び、戸の向こうに居る人物に向けて来訪を告げた。
「入っていいぞ」
陽気な声が僕の声に答え、僕は戸を開けてゆっくりと部屋の中に入った。
部屋の電気は消え、枕元に組み込まれている電灯が部屋をほんのりと照らす。
薄暗い部屋の中で枕元に布団にくるまったままで部屋の主――ノネットさんはにっこりと微笑んで僕を出迎えた。
ノネットさんはここ最近、特区日本の様子が気になる為か、このように何度もエリア11を視察にやってくる。
何故こんな時間に薄暗い部屋に呼び出したのか、そこからして僕は怪しむべきだったのかもしれない。
「すまんな、こんな遅くに。今夜は・・・お前に頼みがあって来てもらったんだ」
そう言って、ノネットさん様は僕に手招きをして近くに来るように言った。
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