NOVEL

□貴女が知らない、貴女のために
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租界のショッピングモールを歩いていたら、ふと足が止まりあるものが目に留まった。
灰銀の髪の下から覗く瑠璃色の双眸が捉えたもの、それはショーウィンドウに飾られた一着の白いドレスだった。

――彼女が着たら似合うかも

ふとそんなことを思ってしまう。頭を振ってその場を離れたがドレスが目に焼きついて離れない。
そのままショッピングモールを歩いて花屋を通り過ぎようとした時、またしてもあるものが目に留まってしまった。
どうするか腕を組んで考え出すライ、唸りつつもアッシュフォード学園のクラブハウスに向かって歩いているつもりであったが、知らず内に踵を返して先程の店へと引き返していた。

穏やかな日差しが窓から差し込む部屋にヴィレッタ・ヌゥはいた。
ある人物から呼び出されて、その部屋にある椅子に座り込み腕時計にチラチラと視線を送っている。
本日も学生は勉強という義務を終えるとクラブなどに足を向けていった。
彼女が顧問を務める水泳部は今日は休みとなっており、職員会議が終えた現在、任務の定期報告の時間までの間はフリーとなっている。
軽く三十分は経過したであろうか。彼女は暇つぶしにと纏め上げた長髪をいじり始める。
枝毛を二箇所ほど見つけたときに部屋のドアが勢いよく開かれた。一瞬、身構えそうになってしまったが入ってきた人物を見てすぐにその行動は中断された。
アッシュフォード学園の制服で身を包み、灰銀の髪と瑠璃色の瞳が特徴的な少年――ライが入ってきたからだ。
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